弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第229回
借金は誰にでも平等に相続される

前回の事例で、
妹さんは、100万円しか相続せず、
お兄さんが借金を返していくと
約束したにもかかわらず、
お兄さんが借金を返さなければ、
妹さんは、
会社の借金の残りを払わなければならない
という話をしました。

そのことについて、説明します。

借金は、法定相続分にしたがって、
相続人に相続されます。
プラスの財産であれば、
遺産分割協議書で決めると、
そのとおりになります。
例えば、遺産の全てをお兄さんが相続すると
遺産分割協議書で決めたとすれば、
遺産の全ては、お兄さんのものとなります。

しかし、借金の場合、
債権者である銀行がいますから、
借金は全てお兄さんが相続すると
遺産分割協議書で決めたとしても、
相続人間の取り決めとしては有効ですが、
銀行に対しては、無効です。
だから、前回の事例で、
お兄さんが借金を全部返済すると
遺産分割協議書で定めてあったとしても、
いざ、会社やお兄さんが払えなくなってしまうと、
妹さんが会社の連帯保証人として、
借金を支払う義務を負うこととなってしまうのです。

相続するのは、
単なる借金だけでなく、
連帯保証債務も相続の対象となります。 
だから、亡くなった方が
誰かの借金を連帯保証している場合には、
相続人は、法定相続分に応じて、
連帯保証債務を負うこととなるのです。

前回の事例で、お父さんが
会社の1億円の借金について
連帯保証していたことから、
相続人であるお兄さんと妹は、
5000万円ずつの連帯保証債務を
相続することとなっていたのです。
だから、妹さんは、
会社やお兄さんが借金を払わなければ、
銀行から、連帯保証人として、
残った3000万円少なくとも1500万円を
請求されるということとなってしまうのです。

このような悲劇を防ぐためには、
お父さんが亡くなってから
3ヶ月以内に妹さんが相続放棄をして、
100万円は、お兄さんからの贈与
という形にすればよかったのです。

遺産分割協議書の作り方で、
結果は同じでも、
借金のリスクが全然違うこととなります。
相続財産に借金がある場合は、
将来自分が払うことになるかもしれないことに
十分注意して遺産分割協議をしてください。


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2007年2月1日(木)

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