弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第258
借金のある相続

相続、遺産分割と言えば、
親の残した遺産をもらえる
というプラスのイメージがあります。
しかし、遺産に不動産や株式など
プラスの財産(資産)が多い場合でも、
借金もあるというケースもあります。

借金も、プラスの資産もあるケースでは、
借金と資産をどう分けるのかが問題となるので、
なかなか難しいです。
一見、資産を相続した割合によって、
借金も返していくということにすれば、合理的です。
しかし、借金は、銀行など貸主の同意を得ない限り、
法定相続分に従って、
各相続人に相続されることとなっています。

資産が1億円、借金が5000万円で、
相続人が、妻と子供2人のケースで、
資産について、長男が8000万円、
妻と妹がそれぞれ1000万円を相続する
という遺産分割をしたとしても、
法律上、借金は、妻に2500万円、
長男と妹に、
それぞれ1250万円ずつ相続されることとなるのです。

もちろん、当事者間で、長男が、
8000万円の資産を相続する代わりに、
借金を全額銀行に支払うという約束は、有効です。
しかし、長男が、8000万円の資産を現金化して、
全て使ってしまったような場合や
長男が事業に失敗して破産してしまったような場合は、
銀行は、長男から支払を受けられないので、
妻と妹の負担分だけでも、
回収しようと妻や妹に借金を返済するよう
支払を求めてくることができてしまうのです。

普通の人は、借金についての遺産分割も有効で、
長男が全て支払うという約束をすれば、
長男のみが支払い義務を負うこととなり、
長男が支払わないときに
銀行が自分に対し請求できるとは思っていないようです。
しかし、この考え方は間違っています。
だから、借金のある遺産分割については、注意が必要です。





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2007年5月22日(火)

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