弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第259回
借金の返済を無視した遺言

前回の資産1億円、
借金5000万円、相続人が妻と子供2人のケースで、
長男に8000万円、妻と妹に1000万円ずつ相続させる
という遺言があったとします。
このとおり分けてしまうと、
妻と妹は、後で、借金の返済に
困ることになってしまうおそれがあります。
遺言のあるケースでも、基本的に借金は、
法定相続分どおりに相続人が負担することになるからです。

即ち、このケースでは、
借金を、妻が2500万円、長男と妹が1250万円ずつ相続すること
となるのです。
そうすると、妻と妹は、
遺言に書いてある1000万円ずつの遺産では、
借金の返済には足らないこととなります。
しかし、遺言に書いてあるから、
妻と妹は泣き寝入りかというとそうではありません。
こういうケースに備えて、
法律は、遺留分という制度を設けています。

遺留分は、通常、
妻は2分の1×2分の1で4分の1、
子供は2分の1×子供の人数分の1×2分の1となります。
上のケースでは、妻4分の1妹8分の1となります。
借金のある遺留分の計算は、
(資産−負債)×遺留分割合−取得した財産+自己の負担する負債額
で、計算することとなります。
上のケースで言うと、

妻の遺留分は、
(1億円−5000万円)×4分の1−1000万円+2500万円=2750万円

妹の遺留分は、 
(1億円−5000万円)×8分の1−1000万円+1250万円=875万円

となります。
これで、銀行から請求が来ても
十分返済ができることとなるのです。
ただし、遺留分は、
相続が発生して遺言の内容を知ってから、
1年以内に行使する必要があります。
1年なんてあっという間なので、気をつけましょう。





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2007年5月24日(木)

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