弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第276
親のお金が勝手に下ろされた

相続の相談を受けた際によくあるのは、
親が生きているときに、
親の預金通帳から、
多額の現金が引き出されて無くなっているので、
親と同居していた兄弟に対し、
返せと言えないかという相談です。

もちろん、兄弟が、
親に無断で下ろして、
自分のために使ってしまったということであれば、
親が生きていればその兄弟に対して、
損害賠償請求することができますから、
その子供である相続人は、
預金を下ろして使ってしまった兄弟に対して、
損害賠償請求することができます。

しかし、そのためには、
まず、兄弟が下ろしたということを証明しなければなりません。
親が亡くなってから、
親が生きているときに、
誰が預金を下ろしたかなどは
なかなかわからないものです。
親が足が悪かった、あるいは、
痴呆が進んでいてお金の管理はしておらず、
お金の出し入れの一切を任されていた兄弟がいるのであれば、
その兄弟が下ろしたといえるかもしれません。

預金が下ろされたのが、
最近であれば、
預金の払戻請求書の写しを銀行に出してもらって
筆跡を見ることも可能です。
しかし、お金を下ろされた時期が、
親が元気なころで、
預金も自分で下ろしていたころの話となると、
親が自分で下ろしていた可能性もあるので、
誰が下ろしたかを証明することは難しくなります。
また、古い時期の預金の払戻しでは、
銀行でも払戻し請求書を保管していません。
預金通帳から下ろされていた額が、
1ヶ月あたり10万円から20万円とすると、
高齢者1人の生活費としては少し多いかもしれないけれども、
生活費として使っていてもおかしくはありません。

以上のように、当の本人が亡くなってしまうと、
誰が預金を下ろして、何に使ったかは、
なかなか立証が難しくなります。
だから、心配な人は、親が生きているうちに、
預金がきちんと管理されているのか、
確認した方が良いかもしれません。
ただ、親が元気なときに、そんなことを聞くと、
かえって、聞いた本人が親から財産を狙っている
と思われてしまうかもしれませんので、
気をつけてください。





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2007年7月24日(火)

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