弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第285回
ビジネスをするなら仲介か売買か

物を仕入れて利益を乗せて売るのが、
これまでビジネスの基本でした。
しかし、ビジネス社会では、
中抜きが多くなっており、
商品を仕入れて、卸す、
いわゆる卸業は、中間マージンが減少し、
苦戦しているとも聞きます。
付加価値をつけずに、
商品を右から左に流して、
利益を上げるというのは、
なかなか難しいのかもしれません。

ただ、卸業は、
中間マージンが低くなったとしても、
仕入れも、卸しも、
法律上は、売買契約なので、
かなり高いリスクを背負っているので注意が必要です。

例えば、500万円の商品を仕入れて、
600万円で卸すとしましょう。
卸先が倒産したら、当然のことながら、
600万円の代金が回収できなくなります。 
しかし、仕入代金の500万円は、
仕入先に支払わなければなりません。

こんなことは、当たり前と思われるかもしれません。
上のケースでは、
粗利を20%(100万円)も見込んでいるので、
600万円が回収できずに500万円を支払うこととなったとしても、
何件もの取引ではバランスが取れているかもしれません。
しかし、卸の実情は、
粗利が20%も取れる取引は少ないと聞きます。
商品を右から左に流すだけなので、
数パーセントというケースもあると聞きます。

例えば、上の例で、
粗利が5%とすると、25万円です。
500万円で仕入れた商品を525万円で売り、
この25万円のために、
525万円が回収できない場合でも500万円を支払う
という貸倒リスクを負うこととなります。
こうなると、卸先の支払能力によりますが、
リターンに比べてリスクがかなり高くなってきます。
それなら、いっそ、
仕入業者と卸先の間に仲介として入って、
仕入業者が卸先に525万円で販売することにして、
仲介手数料として、
25万円をもらうということにした方が
法的にはリスクを回避できます。

商慣習上、売買以外の取引はなかなか難しいかもしれませんが、
物が売れない時代なので、
売り先を見つけてくれたら手数料を支払うと
いう業者もあると思います。
ビジネスでは、何でも売買にするのではなく、
仲介という選択肢もあるのです。





←前回記事へ

2007年8月23日(木)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ