弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第291回
高齢者の財産を守るには

リフォーム詐欺、振り込め詐欺など、
高齢者の財産を狙う犯罪が増えています。
犯罪にはならなくても、
高齢者に取り入って、
無用の呉服を買わせたり、
健康食品や健康器具などを購入させたりする
消費者被害も後を絶ちません。

高齢になれば、誰しも、
記憶力が鈍くなり、判断能力も弱くなります。
これらの高齢者を詐欺や消費者被害から守るための制度が、
成年後見制度です。

この成年後見制度は、
細かく分けると、
(法定)後見、保佐、補助、任意後見の4つがあります。
任意後見制度は、
自分が判断能力の十分なときに、
いざとなったときに面倒を見てもらう人を指定しておけると、
話題になりましたし、
今でもそういう取り上げ方をされます。

しかし、任意後見制度では、
高齢者を詐欺や消費者被害から守ることはできません。
というのは、任意後見制度は、
後見人に、本人の代わりに、預金を下ろしたり、
契約を結んだりする権限を与える制度ですが、
本人が自分で預金を下ろしたり、
契約を結んだりすることを禁止する制度ではないからです。

要するに、任意後見制度が適用されて、
後見人がいても、
本人が、騙されて契約を結んでしまうことを止められないのです。
これに対し、法定後見、保佐、補助の制度は、
後見人、保佐人、補助人は、
万が一、本人が騙されて契約を結んでしまっても、
契約を取り消すことができます。

法定後見の場合は、
本人がやった取引は、
全て後見人が取り消すことができます。
ただ、保佐や補助の場合は、
保佐人、補助人が何について、
取消権を持つのか予め裁判所が決めるので、
どの範囲で取消権を認めてもらうのか、
裁判所によく説明しておく必要があります。
不動産を持っている人なら、売買契約。
株をたくさん持っている人は、株の売買。
預金を持っているのであれば、
一定額以上の預金の引き出し及び解約
その他借入れやクレジット契約。
等々。

後見人や保佐人、補助人は、
弁護士等専門家だけでなく、
身内の人でもなれますので、
高齢者の財産を守るために、是非利用してください。





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2007年9月20日(木)

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