弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第355回
不良債権が増える理由

サブプライム問題関連で、
アメリカなどの金融機関のサブプライム関連でも
損失額が発表されています。
その中で、サブプライム問題が発生した当時と現在とでは、
金融機関による損失額が違っていて、
現在の損失額が当初発表の損失額に比べて大きくなっています。

これは、日本の金融機関による不良債権額の発表が、
調べる度にその額が大きくなって行ったのと似ています。
この仕組みはどういうことかというと、
まず、不良債権というのは何かというと、
債権(一般的には貸付金)で回収見込みがないものです。
お金を貸したけれども返してもらえる見込みがなくなったもの、
これが不良債権です。

このお金を返してもらう見込みは、
経済状況によって変動します。
例えば、サブプライム問題が発覚した当初であれば、
サブプラム問題が発覚したからといって
アメリカ経済が急にだめになるわけではありません。
まだそれまでの好調な経済を引きずっていますから、
お金を貸した会社も、
売り上げもそれほど落ちていないと思われます。
そこで、不良債権としては、認定されていないかもしれません。

すると、金融機関の損失は少ないこととなります。
ところが、サブプライム問題が浸透して、
経済が悪化したときには、
お金を貸した会社は、
会社を維持できるだけの売上を確保できなくなるかもしれません。

そこで、この会社に対する貸付は、全額不良債権となります。
また、不動産を担保にお金を貸した場合、
問題が発覚した当初は、不動産の下落率が小さいですから、
貸したお金のうち回収できない金額は小さいです。
即ち、不良債権額は小さくなります。

ところが、不動産価格が下がれば、
担保の不動産を売却して回収できる金額も少なくなります。
即ち、不良債権額も大きくなるということです。

アメリカでも、
金融機関の発表した損失額が当初より大きくなったというのは、
こういう理由に基づくと思います。

日本のバブル崩壊時は、
損失を確定するという不良債権処理に
10年以上も時間をかけたため、
不良債権額を調査し発表する度ごとに、
その損失額が大きくなったのです。





←前回記事へ

2008年5月8日(木)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ