弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第412回
株の買値が安すぎる

数年前から上場会社の経営者が投資ファンドと組んで、
市場で株式の全部又はほとんどを購入して、
上場廃止にするケースがありました。
経営者による企業買収ということで、
「MBO」と呼ばれています。

このMBOでは、経営者が株式を購入することになるので、
経営者にとっては、株価は低い方がよいわけです。

逆に、売主となる一般投資家(株主)にとっては、
株価は高い方がよいわけです。

ところが、株主は、
会社の財務状況や事業の将来性など細かいところはわかりません。
これに対し、経営者は、
会社の事業の不利な面を強調することにより、
株価を下げることができます。

早い話、経営者は、会社の不利な面を公表し、
株価が下がったところで、株を買えば、
低い価格でMBOができるのです。

経営者の味方をすれば、それだけうまく行っていないから、
株主にこれ以上損をさせないように、
一度自分が株を引き取って、
思い切ったリストラなどをして損を出してから、
再建するのだから、
株の評価が低くなるのは当然だということなのかもしれません。

さて、このMBOするときの
株主から株を買い取る値段が低すぎるということで、
起こされた裁判があります。

「牛角」を経営するレックスホールディングがMBOをする際に、
株主から株式を買い取る金額が低すぎる
と訴訟を起こされていました。

一審では、会社側が勝訴しましたが、
二審では、株主側が勝訴しました。

二審の判決では、
会社側がMBOを前提として
会計の下方修正がなされたとまで言われてしまいました。

負けた会社側は、
さらに最高裁の判断を求めて申立をするという話でしたが、
最高裁では、どういう結論が出るでしょうか?
注目ですね。


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2008年12月2日(火)

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