弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第433
2000億円のものが100億円に!

2000億円以上もかけて造ったホテルを
100億円で売るのはけしからんと言われているかんぽの宿。

しかし、かんぽの宿の問題は、値段だけの問題ではないようで、
新聞や雑誌やテレビなどでいろいろ報道されています。

値段だけの問題であれば、
2000億円以上かけて造ったとしても、
誰も買う人がなければ、100億円でもおかしくないということは、
みなさん、株式などの投資をされているのでわかると思います。

バブル経済崩壊後には、同様のことは、
ホテルやゴルフ場などあちこちで起きていました。

ホテルやゴルフ場を購入する人は、
自分で使用するために買う人はいませんから、
そのホテルやゴルフ場を経営したときに
いくらの収入あるいは利益を得られるか
という観点から価格を決めるわけです。

みなさんが、賃貸用のマンションを購入するのと一緒です。
その場合、いくらで建設されたかというよりは、
家賃収入がいくらか、
即ち、投資利回りがいくらになるか
ということを基準に購入するはずです。

ホテルやゴルフ場を購入する企業も、同様に、
投資利回りを基準に価格を算定するのであって、
いくらで建設されたかは、あまり関係ないわけです。

かんぽの宿は、過去赤字だったということですから、
投資利回りで計算すると、
無料(ただ)でも買えないということになります。

もちろん、入札する企業は、購入後にさらに設備投資をして、
黒字化を図った場合に、
黒字にすることができる
という見込みがあるから購入するのでしょう。

しかし、現在、赤字のホテルを購入するのですから、
引き続き赤字の見込みもあるわけで、
また、黒字となった場合でも、
いくらの利益を得られるかということはわからないわけです。
これら不確定な要素を前提に入札するのですから、
低くなるのは当然と言えば当然です。

しかも、かんぽの宿は、購入条件として、
それまでいた従業員の雇用を守ることが前提となっているようで、
より不利な条件となっています。

したがって、かんぽの宿の入札価格が、
建築費用と比べて低いことは、あり得ることではあるのです。

しかし、売却の方法が
経営状況が異なる多数のホテルの一括売却だったり、
購入企業選定の過程が公正だったのかという疑惑があったり、
1万円で購入したものが6000万円で転売されたりするなど、
かんぽの宿の売却は、
いろいろ問題を含んでいるようで、
今の段階ではなんとも言えませんね。


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2009年2月17日(火)

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