弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第439回
ワークシェアリング

最近、あちこちで雇用の問題が取り上げられており、
雇用の問題は、法律も絡んでくることから、
このコラムでも取り上げています。

さて、最近、ワークシェアリングということが、
雇用の問題と関連して話題とされています。

このワークシェアリングは、
従業員の働く時間と給料を全体的に減らして、
解雇する従業員を減らそうという制度です。

例えば、給料月額30万円の従業員が30人いたとすると、
全体で人件費は月額900万円必要です。

経費を90万円削減する(総人件費は810万円とする)ために、
3人解雇しようとするところを、
全員働く時間を10分の1削って、
全員の給料を27万円にすると、
総人件費は810万円となり、
解雇しなくて済むということになります。

給料を1割でも削られたら嫌だという方も多いでしょう。
でも、1割くらいなら、
全員の雇用を守るために我慢しよう
という考え方もあると思います。

しかし、この給料減額の幅が
2割、3割、5割となるとどうでしょうか?
なかなか賛成するとは
言えない人が多くなるのではないかと思います。

それに、従業員の数を一定割合減らすのと、
1人あたりの給料額を一定割合減らすのでは、
雇い主にとっては、リストラの効果が違ってきます。

解雇の場合、解雇した従業員に支給されている交通費や
社会保険料、退職金がある場合は
退職金が全く無くなりますが、
全員の給料を一定割合減らす場合には、
交通費全く減らないし、退職金や社会保険料も
従業員への支給総額は
解雇するときよりは減らないと思われます。

また、1人あたりの働く時間と給料を減らすというのは、
工場の生産ラインやパソコンでの入力など、
時間当たりの仕事と対価がはっきりしている業種であれば、
比較的容易ですが、研究開発や
総務、営業、管理職などは、
働く時間を減らすと言っても、
そんなにうまく減らせるんでしょうか?
ただでさえサービス残業が多いのですから、
単なる給料の引き下げになるような気がします。

そもそも、雇い主と従業員との間で、
総売上に占める人件費(給料の総額)の割合と
経営側の取り分の割合について、合意がなければ、
利益が出たときに給料の増額がないのに、
不況になるとどうして従業員の給料だけ減らされるんだ
という話にもなりかねません。

などなど、ワークシェアリングは、
不況時はみんなで助け合おうということで、
一見よさそうに聞こえますが、
実現するのはなかなか難しいような気がします。


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2009年3月10日(火)

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