弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第442回
協議すると記載しても意味はない

弁護士の仕事に会社の顧問業務があります。
会社の顧問業務で、多い仕事の1つは、
契約書に、不利な条項が入っていないか、
通常入っている規定が抜けていないかなどを見ることです。

会社同士の契約書でも、個人間の契約書でも、
「紛争が生じたときは話し合いにより解決する」
という記載が入っているものが多いです。
これを「協議条項」などと言います。

これは、紛争が起きたら、
裁判によらず話し合いで解決しましょう
という内容の規定です。

話し合いで解決できれば、
それに越したことはないので、そういう意味では、
契約書に入れておいてもよい規定とも言えます。

しかし、紛争というのは
お互いの言い分が異なることから発生するもので、
そんなときに、話し合いをすると言っても、
大体お互いがお互いの言い分を主張し合って
終わることが多いのです。

だから、契約書に紛争が生じたときは
話し合いにより解決すると契約書に記載したとしても、
あまり紛争解決の役に立ちません。

契約書は、いざ紛争になったときに
どう解決するかという基準を定めておくためのものなので、
こういう紛争が起きたら、
誰がどういう責任を負うかと記載しておかないと
意味がないのです。

もちろん、誰も責任を負わないという記載の仕方もあります。
お互いが円満に解決することを望むのであれば、
契約書にはこう書かれているけれども、
両者の円満な関係を保つために、
一方が責任を負ったり、
逆にその責任を免除したりということもできるわけです。

しかし、取引社会の実情は、
万が一のときにどちらかの責任が発生することを
契約書に記載しようとすると、契約書を結ぶ前から
疑っているのかと、
契約自体が破談になりかねません。

そこで、顧問弁護士としては、
万が一の場合どちらの責任かを
明確にする規定を入れた方がよいけれども、
入れない場合は法律上
依頼者にどういうリスクがあるかを説明して、
そのリスクは可能性が少ない、あるいは、
やむを得ないと考えるかどうかなどを
判断してもらうこととなります。


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2009年3月19日(木)

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