弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第445回
遺言書に全ての財産を記載しないと

このコラムでも遺言書は書いた方がよいと何度か書いていますが、
なかなか遺言書を書く人は少ないようです。

今日は、遺言書を書いたとしても、
一部の財産についてしか遺言書に書かなかった場合の話です。

遺言書でよくあるのが、
不動産についてのみしか遺言書に記載しない遺言です。

不動産は、一般の人にとって
子孫に伝えて行きたい重要な財産で、
価格も大きいし、
お金のように簡単に分けることもできないことから、
不動産についてのみ、
誰が相続するのかを記載してある遺言は結構あります。

例えば、Xさんが、自宅(評価額7000万円)と
マンション(評価額5000万円)を持っていて、
AとBの2人の子供がいるケースで、
自宅はAに、マンションはBに相続させる
という遺言を書いている場合がそうです。

このケースで、Xさんに預金2000万円があったときは、
預金は、不動産の価格を考えないで、
AB平等に1000万円ずつ分けるのか、
それとも、不動産の価格差を考えて、
不動産で2000万円少ないBに2000万円全額相続されるのか、
という問題が生じます。

一般的には、遺言のある財産と遺言のない財産とを合わせて、
法定相続分で分けるという考え方が有力です。

即ち、不動産の差額を考慮して、
預金を分けるという方法で、
先ほどの例ですと、
不動産で2000万円少ないBに
預金2000万円を相続させるということになります。

しかし、遺言の書き方や個別の事情によっては、
遺言者の意思を尊重して、
不動産は不動産で遺言書のとおりに分け、預金は預金で、
法定相続分どおりに相続させる
という考え方も成り立たないわけではありません。

そこで、せっかく遺言書を書いたのに、
一部の財産を書き落としてしまうと、
書き落とした遺産を巡ってどうやって分けるか
争いが生じてしまう可能性があるのです。

したがって、遺言書を書くのであれば、
全ての遺産について書いてください。

書き落としを失くすためには、
「この遺言に記載していない財産があるときは、○○に相続させる」
と記載するか、
「この遺言に記載していない財産があるときは、
AとBに2分の1ずつ相続させる」
と記載すればよいと思います。


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2009年4月2日(木)

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