弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第480回
出すのは簡単、回収は困難

預けたお金を返してもらう。
貸したお金を返してもらう。
商品の代金を払ってもらう。

など、相手からお金を取り立てることは、
弁護士の仕事になります。
これを一般的に「債権回収」と言います。

債権回収の相談や依頼は、
弁護士の仕事の中では、多い方です。
裁判で争った結果、
お金を払えという内容で解決する事件も多いので、
結局は、相手からお金が取れるかどうか
という問題になることも多いからです。

しかし、預けたお金、貸したお金、
代金などが払えないという相手は、
法律上言い分があるから払わないというよりも、
お金がないから払えないというケースが多いです。

ないところからは取れないというのが、現行の法制度です。
財産があれば、これを差し押さえて、
回収する可能性があります。

相手が個人であれば、自宅(土地建物)、
勤務先からの給料、自動車などが考えられます。

相手が会社であれば、売上金や預金、自動車などでしょうか。
しかし、自宅の土地建物くらいは
登記簿謄本を取れば調べられますが、
他の資産は、個人情報保護もあり、
簡単には調べられません。

すると、裁判で勝ったとしても、
回収はできないこととなってしまいます。

特に、これまで取り上げてきた投資被害の場合、
出資金の大半は、経営者の報酬や従業員の給料、
出資者への配当で、消えてなくなってしまっていますから、
押さえる財産はありません。

仮に財産が残っていたとしても
それを出資者全員で分けるのですから、たかが知れています。

お金を出すのは簡単でも、回収は難しいことが多いので、
お金を出すときには、慎重になることに越したことはありません。

金融のプロと言われる銀行は、
回収が難しいことがわかっているので、
相手の収入や資産を調査した上で、
不動産を担保に取ったり、
保証人をつけさせたりするわけです。

みなさんは、金融については、素人なのですから、
お金を出すときに、回収のことを考えたら、
少なくとも、銀行以上に、相手の収入や資産を調査して、
不動産を担保に取ったり、
保証人を付けてもらったりする事が必要だと思います。


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2009年8月6日(木)

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