弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第511回
判決を取るのは無駄か?

この前、判決に代わる書類として、
公正証書があるというお話をしました。
そのときにも説明しましたが、
判決を取る意味は、2つあります。

1つは、争いがある点を裁判所に
どちらが正しいか判断してもらうこと、
もう1つは、権利を実現することです。

このことに関し、読者からの質問がありました。
判決を取ってもお金の回収できない事案が多いと聞くので、
判決を取ることは無駄ではないかというものです。

先ほど、判決を取る目的の1つは、
権利の実現をすることだと言いました。

離婚を求める裁判、遺産分割を求める裁判
(厳密には、判決でなく審判です)、
建物の明け渡しを求める裁判、
土地の移転登記を求める裁判などでは、
判決を取れば、権利を実現しやすいです。

離婚を認める判決が出れば、離婚ができますし、
具体的にこのように遺産分割をせよという審判がでれば、
遺産を分けることができます。

建物の明渡しや移転登記なども、
判決が出れば、建物を強制的に明渡したり、
移転登記をしたりすることが可能です。

ところが、お金の支払いを求める裁判では、
判決が出てもお金を回収することは、
なかなか難しいケースも多いです。

僕も、このコラムで何度も、
お金のない人からは、
お金を取るのは難しいという話をしたと思います。

なぜかというと、判決は、
その人が持っている財産を差し押さえる権利を認めるだけで、
判決に従わずに支払わない人に対して、
罰則などはないからです。

だから、きちんとした勤務先がある人や
不動産など換金性のある資産を持っている人に対しては、
差し押さえが可能なので判決を取ることは効果があります。
即ち、無駄ではありません。

しかし、収入が不定期で、あるかどうかもわからず、
財産も持っているかどうかわからない人に対しては、
判決は効果がない、即ち、ご質問にあるように、無駄なのです。

HiQを読んでいるみなさんは、
きちんと生活をしている方々なので、
お金を払えという判決を取られると、
不利になる人が多いんじゃないでしょうか。


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2009年12月8日(火)

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