弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第516回
訪問販売お断りシールは意味がない?

以前、高齢者が、訪問販売によって、
何度もリフォーム工事をさせられて、
多額のローンを組むこととなった被害に遭ったことが、
報道されたのを覚えているでしょうか?

この訪問販売対策について、
一部の自治体では、
「訪問販売お断りシール」を貼っているにもかかわらず、
訪問販売により商品の販売などを勧誘した業者について
取締りをしていたようです。

ところが、この度、消費者庁が、
この「訪問販売お断りシール」は、
「契約締結しない意思」の表示に当たらない
としたことから、
消費者庁は、消費者でなく、
業者の味方なのかと批判されています。
そのいきさつについて説明します。

12月1日から、特定商取引法という法律で、
訪問販売業者は、
一度断られたとき
(「契約締結しない意思」を表示されたとき)は、
再度勧誘することが禁止されました。
この規定に違反すると、
業者は消費者庁から
業務停止命令を受ける可能性があります。

そこで、「訪問販売お断りシール」を貼っている家に
訪問販売業者が営業に行くのは、
違法なのかということについて、
消費者庁が回答した内容が、
先ほどの「訪問販売お断りシール」は、
「契約締結しない意思」の表示に当たらない
というものなのです。

一般的に、法律で、行為を禁止するときには、
「誰が誰に対し、何をすることを禁止したのか」
を明確にする必要があります。

これらが明確でないと、
禁止される側は
何をしてはいけないのかがわからないのに、
行政処分や罰金などの罰則を受ける
ということになってしまうからです。

消費者庁は、この一般的な法律論を下に、
「訪問販売お断りシール」は、貼られていても、
家の中の誰が、具体的にどの業者に対し、
何の商品を買うつもりがない
と言ったのかがわからないから、
「訪問販売お断りシール」が貼ってあったにもかかわらず、
勧誘をした業者に対し、
特定商取引法に違反したとして、
業務停止の行政処分や
罰金などの罰則を科すことができないと説明したのです。

だから、法律論的には、
消費者庁の言うことは、正しいと思います。

しかし、訪問販売で被害に遭うケースは、
一度断ったけれども、
再度勧誘を受けて、被害に遭ったというのではなく、
おそらく、最初の勧誘で断りきれずに、
契約を結んでしまったという方が多いのではないでしょうか。

そうだとすると、消費者庁のように、
厳密に、法律を解釈して運用していては、
はっきりと断れずに契約を結んでしまうような人を、
救済することはできないということになってしまいます。

ただ、これは、訪問販売業者の営業の自由とも絡むので
なかなか難しいところです。
「訪問販売お断りシール」を貼っているお宅でも、
その家族のうちの誰かは、
訪問販売で売られている商品でも、
きちんとした業者がきちんと説明をすれば
買いたいと思う商品があるかもしれないからです。

「訪問販売お断りシール」が貼ってあるお宅には、
訪問販売は一切禁止とすると、
このような訪問販売を認めてもよいケースでも、
業者は販売できなくなってしまい、
ますます、物が売れなくなり、
景気が悪くなってしまう可能性があるのです。

物事は、一方に良くすれば、
他方にまずい結果になることが多いので、
法律で規制するのは、そう簡単ではないのです。

ちょっと早いですが、
28日で仕事が終わりですので、
今年の連載はこれで終わりです。

みなさんよいお年をお迎えください。


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2009年12月24日(木)

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