弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第529回
借地権は売却できるけれど

この前、土地は、建物を建てる目的で貸すと、
なかなか地主のところに、
無償で戻ってくることはないというお話をしました。

今回は、借地人がする借地権の売却の話です。
契約書には、大抵、
借地権を売却してはいけないと書いてあります。
しかし、裁判所の許可を得れば、地主に承諾料を支払って、
借地権を売却することができます。

ここまでは、取引の仲介に入ったり、
売買の当事者となったりする不動産業者も知識としては、
知っているようです。

ところが、その後の手続がどう進んで行くかを知らないためか、
借地権の売買がトラブルになることが多いです。

どうしてトラブルになるか、順を追って説明します。

まず、賃借人は、借地権の売却の許可を得る手続をとる前に、
借地権(通常は借地権付建物)の売買契約を締結します。

売買契約を締結した後に、
賃借人は、借地権売却の許可を得るための手続を取ります。
(これを「借地非訟手続」と言います) 

ところが、この手続の中で、
地主が自分の土地を買い受けるとして介入権を行使すると、
地主が優先的に自分の土地を買うことができます。

すると、借地権の売主であった賃借人は、
地主に借地権を売却しなければなりませんから、
不動産業者などの買主に
借地権を売却することができなくなります。

したがって、売主である賃借人は、
買主である不動産業者などに対し、
契約違反となってしまいますから、
損害賠償責任を負うか、
違約金を支払わなければならなくなります。 

もちろん、地主から売却代金をもらえるのですが、
不動産業者に勧められるままに、売買契約を締結して、
弁護士を立て、借地非訟手続までしたのに、
不動産業者などの買主に違約金を取られてしまう
というなかなか納得しにくい結果となってしまうのです。

そこで、借地権を売却するときには、
最低限、地主が介入権を行使した場合は、
売買契約を無条件で
解約することができることにしておく必要があります。

借地非訟手続には時間がかかるので、
売買の決済の期限の定め方には工夫が必要となります。

また、弁護士費用などを
どちらが負担するのか決めておいた方がよいでしょう。

地主から売却代金をもらえることになりますが、
不動産業者や第三者が買うよりも
低い金額となる可能性もあるので、
そうなったらどうするかも
契約できめておいた方がよいと思います。

借地権は、売却可能な高額な財産ですが、
法律上取り扱いがちょっと複雑なので、
売却する際には、弁護士に相談してください。


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2010年2月11日(木)

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