弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第577回
株の売却で逮捕

先日、元政治家が株を売却したことが
背任に当たるという理由で逮捕されました。

株の売却が背任に当たるケースは、
珍しいのでどういうことかと、注目していたところ、
担保に入れていた株を売却してしまったということのようです。

そもそも、背任というのは、
契約などにより一定の義務を負う人に成立する犯罪なので、
みなさんにあまり馴染みがないと思います。

よく問題となるのは、ある会社の経営者が、
つぶれそうで返還の見込みがない別の会社に、お金を貸して、
その後、その会社が倒産してしまい、
貸金が回収できなかったため会社が損害を被ったという場合に、
経営者が背任罪で告訴されるというようなケースです。

経営者は、会社のために、
回収見込みがない会社に
お金を貸してはいけない義務を負っています。

その義務に違反して、貸付を行って、
会社に損害を与えると、
刑事責任として、背任罪が成立することとなります。

今回の元政治家は、逮捕容疑は、
担保に入れていた株式を売却してしまったというものです。

ちょっと難しいですが、
お金を借りて株を担保に入れていた人は、
当たり前ですが、
お金を貸してくれた人のために担保である株を
処分してはいけない義務を負っています。

元政治家は、この義務に違反して、
株を処分してしまい、
お金を貸してくれた人に損害を与えたことから、
背任罪が成立するということが逮捕の理由です。

元政治家に背任罪が成立するかどうかは、
現段階ではわかりませんが、
株の売却が犯罪となる理由は、お話したとおりです。

背任罪は、民事絡みで問題となるのですが、
窃盗罪、強盗罪、恐喝罪、
詐欺罪、横領罪などの財産犯罪と比べると、
なかなかわかりにくい犯罪です。


←前回記事へ

2010年8月17日(火)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ