弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第580回
弁護士の卵に給与を払うべきか

最近、新聞やテレビで、
司法修習生の給与を払うようにすべきだと
弁護士などがデモをしているニュースを、
みなさん、ご覧になったことがあるかもしれません。

弁護士、裁判官、検察官には、
司法試験に合格しただけではなれません。
その後、司法研修所に入り、
各都道府県の弁護士会、裁判所、検察庁で、
1年間、実務の勉強をして、
司法研修所の卒業試験に合格してから、
弁護士、裁判官、検察官になることができます。

この司法研修所にいる期間が、
司法修習生ということになります。
実は、これまで、司法修習生には、
公務員として給料が払われていました。

その理由は、弁護士、裁判官、検察官
という国民の人権を守る司法の担い手は、
国が責任を持って育てるということだと思います。

ところが、司法試験の合格者を増やしたことから
全員に給与を払うと国の負担が重くなること、
国の財政が逼迫していること、
弁護士など個人の資格を得るための教育に
国がお金を出すことはないなどの理由から、
今後は司法修習生の給与は廃止され、貸付となります。

確かに、個人の資格を取るための教育活動に、
この国の財政が逼迫しているときに、
国がお金を出す必要はあるのかという意見は、
当然だとは思います。

しかし、現在、司法試験を受けるには、
基本的に、大学を卒業後、
2年か3年は法科大学院に行かなければならず、
その期間の学費と生活費を負担できなければ、
弁護士にはなれません。

その上、司法修習生時代の生活費も
負担しなければならないとすると、
相当な金額が負担できないと弁護士にはなれない
ということになります。
(これまでは、司法修習生は給与をもらっていたので
バイトは禁止でした。今後も禁止でしょう)

しかも、以前からお話しているとおり、
弁護士になったとしても、就職できるか、
即ち、安定した収入を得られるかはわからないのです。

そうなると、お金持ちしか弁護士になれなくなってしまいます。
司法修習生に給与をと主張している人たちは、
お金持ちしか弁護士になれなくてよいか
ということを訴えているのです。

個人的には、
お金持ちしか弁護士になれないような状況は悲しいことですが、
他の職業などと比較すると仕方がないような気はします。

僕は、当然、こんなにお金がかかる今の制度では、
弁護士にはなれませんでした(笑)。


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2010年8月31日(火)

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