弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第588回
保証人は割に合わない

みなさん、
親類や友人の保証人になったことがあるかもしれません。
ほとんどの場合、保証人になる対価は、
ゼロ円、即ち、無料です。

保証人になった理由は、
金銭目的ではなく、「困っているので」
「迷惑はかけないから」「助けて欲しい」
などと頼まれてなることがほとんどだと思います。

しかし、実際に、債務者が支払わなければ、
保証人は、未払金の全額を支払う義務があります。

1000万円の保証人になれば、
1000万円全額を支払うことになるかもしれないのです。

要するに、保証人になるということは、
お金を全くもらわず、
1円の得にもならないのに、
1000万円ものリスクを負担したということになるのです。
こんな経済的に不合理なことはないと思います。

では、保証人になる際に、
お金をもらえばよいかと言うと、そうではありません。

お金をもらうのであれば、
お金を借りた人の不払いとなる確率を計算し、
その確率よりも高い金額をもらわなければなりません。

例えば、不払いとなる確率が10%であるならば、
100万円以上を保証人料としてもらわなければならない
ということになります。

しかし、そんな計算をしてから、
保証人になる方は、いません。
それに、不払いになる確率を考えるような人は、
保証人になっていないと思います。

普通の人は、相手の「迷惑をかけない」
という言葉を鵜呑みにして、
単に不払いにならないだろう
という予測の基に、保証人になってしまいます。

しかし、相手は、「迷惑をかけない」
と希望的観測を話しているだけで、
客観的根拠をもって、言っているわけではないのです。

したがって、相手が「迷惑をかけない」と言ったとしても、
相手の収入、当該借入額、
預金や不動産の名義や担保の設定状況、
その他の借入額、毎月の返済額、
家計の収支状況まで確認する必要があるのです。

会社の保証人になるのであれば、
会社の売上、固定経費、預金や不動産及び担保の設定状況、
借入総額、毎月の返済額、事業の内容など、
詳しく聞く必要があります。

相手は、嘘を言っている可能性もありますから、
きちんと、税務申告書などの資料で確認しましょう。

そこまでしても、
相手がリストラされて収入がなくなる場合もありますし、
相手のしている事業がダメになる場合もあります。

保証人となって保証債務の履行をするときは、
事前に保証額の全額をもらっていない限り、
損をする割に合わないことです。

本当に、気軽に保証人欄に署名捺印をすることは、
止めた方がよいでしょう。


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2010年9月28日(火)

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