弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第594回
人材派遣は制限した方がよいか?

ワーキングプア問題が脚光を浴び、
人材派遣制度の利用を制限しよう
という法律改正がなされようとしていました。

しかし、不況の長期化や円高、
中国との外交問題など大きな問題が発生し、
なかなかそれどころではないようです。

法律の改正案は、
(1)派遣会社に仕事のあるときだけ所属している
  登録派遣制度を専門職に限定すること
(2)製造業に対する人材派遣を禁止すること
(3)2ヶ月以内の短期派遣、日雇い派遣を禁止すること
などが主要な改正案となっています。

そもそも、派遣制度の利用の緩和は、
バブル崩壊後の不況のときに、雇用がないので、
派遣でもよいから雇用を増やした方がよいのではないか
ということで、始まったと思います。

そして、そのときは、景気が良くなれば
派遣から正社員になるだろう
という見通しだったと思います。

しかし、少し景気が良くなったくらいでは、
派遣から正社員への転換は進まず、
派遣社員の数は増えてしまい、
不景気になると、
真っ先に派遣社員が切られてしまう
ということが生じてしまいました。

そこで、派遣法改正により
派遣を規制しようとなったわけです。
しかし、もともと、不況のときに派遣でも
雇用があった方が良いという考え方の下で、
派遣制度の緩和がされたのに、
同じ不況の現在、派遣制度の規制を行えば、
派遣だから生じていた雇用は
失われてしまうような気はします。

ただ、派遣制度を規制しなければ、
先行き不透明な今の経済状況の下では、
使い勝手の良い(人を切りやすい)派遣制度の利用は
増えるばかりとなりかねません。

前にも言いましたが、
なかなか労働問題は、解決が難しいです。

僕としては、クビきりのリスクを負う派遣の利用は、
同業の正社員の賃金よりも
高くする規制をすればよいと思っていますが、
それでも問題がうまく解決できるかはわかりません。

賃金が高いなら使わないこととなり、
結局雇用が無くなる可能性があるからです。


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2010年10月19日(火)

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