弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第609回
預金よりも給料の方が確実

判決を取れば、相手が個人の場合は、
預金だけでなく、給料を差し押さえることができます。
預金と給料の差押の違いは、次のようなところにあります。

預金は、差押時点の残高しか差し押さえられません。
したがって、前日に全額下ろされていた場合には
差押は空振りになってしまいますし、
差押の次の日に振り込まれたお金があったとしても、
これに差押の効力は及ばないのです。

したがって、預金の差押は、当たれば大きいのですが、
差押の通知が裁判所から送られた日に、
残高があるかどうかという点でリスクは高いです。

これに対し、給料の差押は、半年とか1年とか、
債権額に達するまで、
一定期間の給料を差し押さえることが可能です。
ボーナスや退職金も差し押さえることはできます。

ただし、給料は、
預金と違って額面全額を差し押さえることはできません。

これは、給料を全額差し押さえられてしまうと、
生活ができなくなってしまうという理由から、
給料の差押の範囲が制限されているからです。

給料は、4分の1までしか差押をすることができません。
例えば、所得税、住民税、社会保険料を除いた金額が
30万円だったとすると、
月額7万5000円しか差し押さえることができないのです。

ただし、債務者の給料が所得税や、
住民税、社会保険料を除いて、
100万円のような高給であった場合には、
4分の1である月額25万円ではなく、
33万円を超える金額全部、
即ち、67万円を差し押さえることができます。

普通の人は、すぐに勤務先を変えることはできませんから、
1回あたりの差押え金額が制限されていたとしても、
毎月の給料から一定額を差押さえて取ることができるので、
給料の差押は、普通の人には、効果的です。

しかし、定職に着かず、
すぐに勤務先を辞めてしまうような人には、
給料の差押は、あまり効果がないという面はあります。 


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2010年12月9日(木)

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