弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第618回
遺言書は公正証書遺言で

自分が死んだときに、
残された家族が遺産分割で揉めることを防ぐために、
遺言書を書きましょうということは、ときどき書いています。

そして、遺言書には、
遺言書の全文を手書で書いて、
署名捺印をしなければならない自筆遺言と、
公証役場で作成する
公正証書遺言がある話もしたことがあると思います。

今日は、この2種類の遺言書のメリット、デメリットのお話です。

自筆証書遺言のメリットは、
費用がかからないということです。
便箋でも、ノートでも、全文を、ワープロ打ちではなく、
自分で手書して、日付を書いて、
署名捺印をすれば、できあがりです。

しかし、自筆証書遺言には、デメリットもあります。
まず、全文を手書きしなければなりませんから、
膨大な量の財産があるケースや、
複雑な遺言をする場合には、
遺言書を書くのに、大変な労力がかかりますし、
内容を間違える可能性も高いです。

また、自分で書くと、日付が抜けている、
印鑑を押すのを忘れた、
など自筆証書遺言の要件を満たさない
遺言書を書いてしまう可能性があります。 

これらについては、自分が頑張れば何とかできるかもしれません。
しかし、自筆証書遺言のデメリットは、
遺言書を書いてから、
自分が亡くなるまでに、
遺言書が紛失してしまうこともあります。

紛失していないのに、
相続人が遺言書に気づかないこともあるかもしれません。

相続人の誰かが、遺言書を破って捨ててしまったり、
隠してしまったりする可能性もあります。

遺言書を破って捨ててしまったりすることは犯罪ですし、
これをすると相続人の資格を失うことになります。
しかし、実際は、遺言書が捨てられてしまうと、
遺言書があったことは、他の人が証明することはできません。

さらに、自筆証書遺言は、遺言を書くときに、
きちんと物事を理解できる能力があったか
(「遺言能力」と言います)が争われたり、
筆跡が他人のものだと争われたりする可能性があります。

公正証書遺言のデメリットは、
作成に、公証役場に支払う手数料がかかることです。
しかし、複雑な内容の遺言でも
公証人がワープロ打ちをしてくれますし、
遺言書は、遺言者の死亡後でも、
遺族は公証役場で遺言の有無及び
遺言が何通あるかなどを検索することが可能です。

さらに、公証役場では、正本を保管しているので、
紛失したり、遺族の誰かが
破棄してしまったりすることができません。

また、公証人が、遺言能力や本人確認をして作成しますから、
後で争われても、公正証書遺言が無効になる可能性は低いです。

これらのことを考えると、自筆証書遺言は、
費用もかからず、簡単にできるのですが、
後で争われる可能性を考えると、
多少費用をかけても、公正証書遺言にした方がよいと思います。


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2011年1月13日(木)

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