弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第622回
警備会社が従業員の借金情報を要求

警備会社が、全従業員に、
借金総額や返済状況などの信用情報を要求して、
信用情報機関が従業員本人に
信用情報を取得させる行為が
信用情報取得の目的以外行為に当たる恐れがあると指摘されていた
というニュースが、朝日新聞に掲載されていました。

もともと信用情報機関が持っている借金の情報は、
その本人が借金の返済能力があるかを
金融機関が確認するためのものです。
そして、本人がその情報を取得できるのは、
その情報が誤っているかどうかを確認するためのものです。

とすれば、信用情報機関に加盟しておらず、
しかも、お金を貸すかどうかを審査するわけでもない
警備会社がその情報を利用するのは、
信用情報機関の信用情報の
目的外利用になる可能性が強いと思われます。

しかし、警備会社は、金銭を運搬したり、
金銭や企業秘密などがあるオフィスを警備したりします。

顧客の財産を守るのが警備会社ですから、
従業員が顧客の金銭や
企業秘密やその他換金できる
顧客の財産に手を付けることがあってはなりません。

ところが、これまで何度かお話しているように、
借金の返済に追われている人は、
借金の返済のためには、
普通の人がしないようなことをしてしまう
という傾向にあります。

そこで、警備会社が借金に困っている人を、
お金に関する警備からは、
排除したいと考えること自体は、自然です。 

実際、警備会社を規制する警備業法では、
破産して復権していない人は、
警備業を営むことはできませんし、
破産すると警備員ができなくなることとなっています。

警備会社としては、
従業員が顧客のお金に手を付ければ
使用者として損害を賠償しなければなりませんし、
顧客としても、
借金の返済に追われているような警備員には
警備をして欲しくないということはあると思います。

したがって、警備会社が従業員の借金の状況について
本人から聞いたりするのは、
合法だとは思いますが、
その手段として信用情報機関の情報を持ってくるよう指示したのが
問題であったと思います。

ただ、どの会社でも就職の際、
あるいは従業員となってから、
借金の情報を確認することになったら、
借金のある人は、就職や昇進ができなかったりして、
ますます借金の返済ができなくなる
ということにもなりかねません。

そこまで考えると、このニュースには、
なかなか難しい問題が隠れていると思います。


←前回記事へ

2011年1月27日(木)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ