弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第621回
学校の先生が保護者を訴える

小学校の先生が生徒の保護者の苦情が原因で不眠症になった
という理由で、保護者に対し、
慰謝料500万円の支払いを求めて、裁判を起こしました。

朝日新聞によると、保護者は、
学校の先生が悪いから、
苦情の申し入れをしていたということのようで、
これに対し、先生は、
さまざまな苦情の申し入れの行為により
不眠症になったということのようです。

学校側と両親が話し合う場を設けたけれども、
両親が拒否をしたということです。

記事の中では、先生が話し合いを拒否したから、
両親は教育委員会に文書を提出した
ということも書かれていました。

どちらの主張が正しいかは、
裁判で明らかになって行くと思います。
報道では、先生が保護者に対し、
裁判をしたこと自体、批判されているようです。

しかし、どちらが拒否したのかわかりませんが、
弁護士としては、話し合いで解決できない
ということであれば、裁判で解決するしかないと思います。

ただ、小学校は、教育委員会に対し、
「モンスターペアレンツに
学校や先生が負けないよう
先生が教員を代表して訴訟を行っていると受け止めている」
という文書を出したようですが、
そうであるならば、先生個人でなく、
学校が当事者となって裁判を起こすべきだったような気はします。

ただ、市立学校らしいので、
学校自身は当事者とはなれず、
市が当事者となってしまうことから、
市が保護者を訴えるとなると、
学校の校長や教育委員会や市(市長や議会)を巻き込んで
裁判をするかどうか決めなければならないので、
そうなるとなかなか難しかったのかもしれません。

それから、学校の先生と保護者(生徒)が
どちらが正しいかを決めるのは、
教室という密室だと一般的には大人と子供ですから、
大人である先生が有利になりがちです。
検察官の取り調べの録画化が叫ばれていますが、
授業中も録画化が必要になってくるかもしれません。

授業を録画しておけば、先生にとっても、
自分は生徒にひどいことをしていない
という証明の手段になります。

検察の取り調べを始め、
何でも録画すればよい
というものではないと思いますが。


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2011年1月25日(火)

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