弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第643回
修繕工事中の営業補償は?

前回から、賃貸物件が震災で壊れた場合の話をしています。
賃貸物件が、震災で、
使用に支障が出るほど壊れた場合には、
貸主は、修繕する義務があるという話をしました。

修繕の規模が大きかったりすると、
借主である店舗や事務所は、
一時的に営業できなくなる可能性があります。

その場合、よくあるのが、
借主から修繕工事中に営業できないことの補償をして欲しい
という営業補償の要求です。

貸主の方も、営業補償を要求されたりすると面倒なので、
修繕工事をしないことにしてしまう場合もあります。

しかし、そのようなことでは、
貸主が建物に必要な修理などができなくなってしまい、
建物の価値や安全性を損なうことになって、
貸主にとっても損であるばかりでなく、
借主にとっても損となり、経済的に不合理です。

そこで、法律上は、
貸主が賃貸物件に必要な修理をすることは、
貸主の義務であると同時に、
権利であると認められていて、
借主は、貸主のする修繕工事を拒むことができない
とされています。

そこで、修繕工事により、
事務所や店舗の営業ができなくても、
貸主は、営業補償などをする必要は一切ありません。
もちろん、一時的な移転費用なども支払う必要はありません。

ただ、修繕工事期間中、
借主である事務所や店舗が
建物を利用できない状態である場合には、
その期間中の賃料は、支払わないでよいということになります。


←前回記事へ

2011年4月12日(火)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ