弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第651回
依頼を受けないなら無責任に言える

依頼者の中には、何人もの弁護士に相談してから、
僕のところに相談に来る方もいます。
その中には、以下のような奇妙なケースがあります。
相談者は、「何人かの弁護士に相談したけれども、
みんな、それはあなたが勝てる。」と言われたというのです。

しかし、僕が話を聞いたところでは、
勝てるかどうかわからないケースなのです。
そこで、僕は、
相談者に「勝てるかどうかわかりませんよ。」と説明します。

しかし、相談者は、
「先生、他の弁護士は勝てるというのだから、
勝てますから受任してください。」と言うのです。
このようなケースでは、僕は、事件を受任しません。
僕が勝てるかどうかわからないと考えて、
そのことを説明しているのに、
相談者は、僕の説明はよく聞かずに、
他の弁護士の説明を聞いて絶対に勝てると考えていることから、
事件を受任してから、裁判での方針で、
食い違いが生じる可能性があるし、
裁判に負ければ、僕のせいだと言われかねないからです。

そこで、僕は、相談者に対し、
「僕は、あなたに勝てるかどうかわからないと説明して、
他の弁護士は、あなたに勝てると説明しているのだから、
僕に依頼するより、
その弁護士に依頼した方が良いのではないですか。」
と聞くのです。

そうすると、相談者は、
「他の弁護士さんは、みんな忙しくて受けてくれない」
というのです。

弁護士は、裁判をして、お金をもらう職業ですから、
勝てる裁判を忙しくて受けられないと断ることは、
ほとんどないと思います。

だから、勝てると言った弁護士は、
自分は面倒だから受けたくないので、
勝てる見込みがあるようなことを相談者には言って、
「だけど自分は忙しいから他の弁護士に依頼して」
と体よく相談者をあしらった
ということなのではないかと思うのです。

自分が裁判をやるのでないのであれば、
相談者に調子のいいことを言うのは簡単ですからね。

あるいは、相談者が他の弁護士も勝てるとは言っていないのに、
他の弁護士も勝てると言っているだけかもしれないのです。

他の弁護士が勝てると言っているのに、
勝てるかどうかわからないと言っている僕に
依頼しようとするのは、おかしいですものね。

事実はどうなのかわかりませんが、
このような相談に当たったことが、
1度だけでなく何回かあります。


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2011年5月12日(木)

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