弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第655
震災で残ったローンを払わない

家や店など、
ローンを組んで建てた建物が津波で、壊されてしまった
という方の一番の悩みが、
ローンの問題だというニュースがよく報道されています。

そして、避難生活を送りながら、
そのローンを律儀に支払っているという話も聞きます。

このローン問題、破産をすれば、借金の問題は解決します。
しかし、大勢の人が一度に破産しなければならなくなると、
その手続や労力、費用が莫大なものとなってしまいます。

そこで、現在、政府は、破産しなくても、
任意に金融機関が
債権放棄をできるような法律を作ることを検討しているようです。

新たな法律ができて、
銀行などの金融機関が債権放棄をしてくれるまでは、
法律上、借り入れの返済義務はなくなりません。

先日お話ししたとおり、
法律上は、利息も発生しますし、延滞金も発生してしまいます。

しかし、避難生活を送っている方々は、収入もないでしょうし、
資産もそれほどない方が多いと思います。
そういう状況では、ローンの支払いよりも、
まず、自分の生活に、お金を使うことが重要です。

収入もなく、資産もなければ、
金融機関は、裁判を起こしても、お金の取りようがありません。

したがって、法律上、
利息や延滞金が発生するとしても取りようがないわけです。

そこで、取りあえず、現時点では、自分の生活を優先し、
法律上は、利息や延滞金の支払い義務が発生してしまいますが、
金融機関へのローンの支払いを止めて、
お金は自分の生活のために使うことをお勧めします。

そして、債権放棄に関する法律が作られたら、
それに基づき金融機関に債権放棄をしてもらい、
もしそのような法律ができなかったときは、
破産などにより残った借金を整理する
というようにした方が良いと思います。


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2011年5月26日(木)

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