弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第679回
自分の住所の裁判所でも裁判ができる

「訴える」即ち、裁判を起こすためには、
どうしたらよいかということで、
どこの裁判所に起こすかという話をしています。
 
どこに訴えを起こすかは、請求する種類によって違うので、
前にも言いました通り、訴える側については、
訴えられる方を説明するのに比べて説明が難しいです。

一番多いお金の請求について、説明します。
貸したお金を返せという請求でも、
売掛金を払えという請求でも、
損害賠償をしろという請求でも、
全てお金の請求の裁判ということになります。

このお金の裁判は、
前回ご説明した相手の住所地の裁判所でなくても、
裁判をすることができます。
それは、お金を払う場所です。
これを「義務履行地」と言います。

お金を払う場所、通常は振込だと思いますが、
振込先が指定されているような場合は、
振込銀行のある場所の裁判所が管轄裁判所となります。

例えば、僕は、虎ノ門に事務所を持っていますが、
貸したお金を○○銀行虎ノ門支店に振り込んでもらう
という約束で、お金を貸した場合には、
この虎ノ門支店が義務履行地となるので、
この虎ノ門を対象とする裁判所に管轄があることとなります。

通常、お金の支払いについて、
振込先も決めていない場合も多いと思います。
そのときには、何と、お金を払う義務履行地は、
債権者、即ち、お金を請求する側の住所地や営業所となります。

要するに、お金を請求しようとして訴えを起こす場合は、
相手が遠方に住んでいたとしても、
自分の住所の裁判所で裁判を起こせるのです。

前回、裁判は、
相手の住所の裁判所に起こすことが原則だとお話ししました。
詳しい人は、そのことは知っていたかもしれません。
しかし、一番多いお金の請求の裁判は、
訴えを起こす方の住所で、起こせるのです。

自分の住んでいるところに近い裁判所で
裁判を起こした方が裁判所に行く時間や
労力はあまりかかりませんので、有利となります。
相手も裁判に出席するのに費用や労力がかかると、
面倒だからと、早期に解決できる場合もあります。

訴える場合には、どこの裁判所に裁判を起こせるか
ということに注意した方が良いと思います。


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2011年9月1日(木)

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