弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第689回
司法試験より過酷な世界

司法試験は、現在、
基本的に、お金をかけて法科大学院に行かなければ受験できず、
法科大学院を卒業しても3回以内に合格しなければ、
受験資格を失ってしまい、
しかも合格率は、約23パーセントというリスクの高い試験です。
しかも、合格しても、就職先が見つからない可能性があります。

しかし、世の中、
司法試験よりもリスクが高い職業はたくさんあります。
芸能関係然り、スポーツ関係然りです。

みなさんご存じないし、興味もない方も多いかもしれませんが、
なるのが難しい職業の1つとして、将棋のプロ棋士があります。

プロ棋士になるには、奨励会というプロ棋士養成機関で、
プロ棋士志望の者同士が戦って、
好成績で勝ち抜かないとプロ棋士にはなれません。

通常、小・中学生で奨励会に入会し、5、6級から始めて、
4段になるとプロ棋士になれます。
その数、半年に2人ずつ、年間たった4人です。

年齢制限があり、21歳までに初段、
26歳までに4段にならないと
奨励会を退会しなければなりません。
勝ち続けなければ昇級昇段せず、負けが増えると、
級や段は下がります。

もちろん、プロになるまでは、
アルバイトをしない限り収入はありません。
今はそうでもないようですが、
以前は高校にも行かずに
プロを目指していた人が多かったようです。

将棋が得意ということでは、
就職に有利になるとも思えませんから、
プロ棋士を目指すということは、かなりリスクの高い行為です。

なぜ、プロ棋士についてこのコラムで取りあげたかというと、
最近、「将棋の子」(講談社)という
このプロ棋士を目指した将棋の天才少年のうち、
プロになれなかった者を取り上げたドキュメンタリーを読んで、
その厳しさや目指す者の精神的なプレッシャーや不安定さは
司法試験にも似たものがあるなと思うと同時に、
司法試験はプロ棋士を目指す奨励会員に比べれば
厳しくはないかなと思ったからです。

何かを目指しているけれども、ちょっと停滞気味の方や、
普段の生活でモチベーションが下がっている方、
勝負の厳しい世界を知りたい方にお勧めです。


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2011年10月11日(火)

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