弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第704回
銀行が貸金業逃れ?

前回、銀行は、銀行法の適用を受けるので、
同じお金を貸すのでも、貸金業者とは異なり、
貸金業法の適用を受けないという話しをしました。

日経新聞によると、
このことで、問題が起きているようです。

具体的には、
新生銀行がそれまで子会社で手掛けていた消費者金融事業を、
新生銀行本体で行うようにしたケース。

債務者の借り過ぎ、貸金業者の貸し過ぎを防ぐために、
貸金業法では、個人が借り入れられる総額は、
年収の3分の1までと貸金業法で定められました。

そこで、貸金業者は、顧客に対し、
年収の3分の1を超える金額を貸すことができません。

しかし、銀行法には、
貸付額の総額を規制する条項はありません。
したがって、銀行は、年収の3分の1を超えても、
顧客にお金を貸すことができるのです。

貸金業者は、新生銀行がこの総量規制を逃れるために、
貸金業者である子会社でなく、
銀行本体で貸金業を行うようにしたのではないかと
疑っているようです。

これに対し、新生銀行は、
「年収の3分の1を超えて借りようとする人は
リスクが高いから顧客として想定していない」と回答しています。

金融庁は、
「銀行は銀行法で経営全般を
厳しく監督しているから規制の対象外だ」
と回答しているようです。

しかし、そもそも、
債務者に対する貸付限度額を定めたのは、
貸金業者の取り立てが問題だから、ではなく、
債務者の借り過ぎを防ぐためだったはずだと思います。 

そうだとすれば、銀行から借りても、
貸金業者から借りても、債務者にとっては、
年収の3分の1を超えて借りれば
借り過ぎになることは同じです。

債務者保護のために規制するなら、
銀行の貸付についても規制することが必要だと思います。

3分の1の規制は厳しすぎ全部に適用してしまうと
必要なところにお金が回らなくなる可能性があるので、
それを防ぐために、
監督の及ぶ銀行にだけ
年収の3分の1を超える貸し付けを認めた
ということであれば別ですが。


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2011年12月1日(木)

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