弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第709回
下ろされた預金を取り戻すには

亡くなった人の預金が
本人の同意を得ず下ろされていた場合には、
その相続人は、勝手に下ろした人に対し、
預金を返還するよう
(あるいは損害賠償するよう)請求することができます。

しかし、その預金の返還請求は
そう簡単なことではありません。
それは、預金を返還請求するには、
まず、預金を勝手に下ろしていた
ということを証明しなければならないからです。

前回の長男がお父さんの預金を下ろしていたケースで説明すると、
預金を下ろしたのはお父さんではなく、
長男だということを証明しなければならないのです。

長男が争っていなければ特に問題にはなりません。
しかし、勝手に預金を下ろすような人が、
自分が勝手に下ろしたと認めるケースは少ないと思います。

そうなると、
(1)通帳は長男が管理していたか、
(2)下ろしたのはATMか窓口か
(3)窓口なら払い戻し請求書の筆跡は
お父さんのものか、長男のものか
(4)ATMはお父さんの住所の近くか
(5)お父さんは健康上預金を下ろす手続きができたか
(6)1回に下ろした金額及び頻度はどれくらいか


などの要素から、
長男が下ろしたことを証明しなければなりません。

長男が下ろしたことを否定し続けた場合、
場合によっては銀行のATMの防犯ビデオを
証拠として利用しなければならない場合もあるかもしれません。

この証明は、結構大変な作業で、
預金を下ろされたのが古い話で、
お父さんが元気なころだとすると、
なかなか証明するのは難しいです。

逆に、お父さんが寝たきりで、
窓口で一度に多額の現金が下ろされていたということであれば、
長男が下ろしたと証明しやすいです。

預金が下ろされたことについては、通帳がない、
あるいは通帳に全取引が記載されていなければ、
通帳の取引明細を銀行から取り寄せる必要があります。


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2011年12月20日(火)

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