弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第716回
葬祭積立の没収条項は無効

冠婚葬祭は、意外にお金がかかり、
まとまったお金が必要となります。
そこで、祭祀場や冠婚葬祭会社が、
利用者の囲い込みもかねて、
積立制度を設けているケースも多いです。

この冠婚葬祭積立金について、
途中解約した場合、
一定回数以下の積立しかしなかった場合は、
全額返還しないという規定があるようです。
この条項が有効か無効か裁判で争われました。

これまでは、契約者に不利な規定でも、
契約書に記載があれば有効となるケースが多かったです。

しかし、現在は、消費者契約法という法律がありますから、
消費者が一方的に不利な規定や
消費者が支払う損害賠償の額が
通常の損害よりも多く定められている規定は、無効となります。

そこで、冠婚葬祭積立金が
一定回数以下の場合全額返還されないことを含めて、
中途解約の場合に取られる手数料の規定が
有効か無効か争われたのです。

これについて裁判所は、
「解約手数料を算定する根拠が具体的に明らかになっていない」
と指摘し、冠婚葬祭会社が手数料に当たると主張した
設備準備費などについては、
「消費者1人が解約したことで生じる費用とはいえない」
として、冠婚葬祭会社の定める解約手数料を無効と判断しました。

判決は、振替手数料1回58円のみを解約手数料として認めました。
したがって、冠婚葬祭会社は、
それ以外の費用は、
引かずに積立金を返さなければならないこととなります。

この解約手数料の規定は、
監督官庁や業界団体の指導基準に基づいて定められているので、
多くの冠婚葬祭積立金の規定に書かれているようです。
したがって、この判決の影響は大きいかもしれません。

消費者相手にビジネスをしている事業者であるみなさんは、
規定を作成するときは消費者契約法上有効かどうか
ということも考慮しなければなりません。

逆に、消費者であるみなさんは、規定があっても、
弁護士に相談すれば、
その規定は無効ということになり
救済される可能性もあるということです。


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2012年1月19日(木)

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