弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第727回
iPadという名前が使えない

みなさん、iPhoneやiPadで有名なアップル社が、
中国で、iPadという名前を使用して
商品を販売することの差し止めを求められており、
裁判になっていることは、
新聞やテレビのニュースで、ご存知かもしれません。

裁判を起こしているのは、唯冠科技深圳という中国の会社で、
中国での「iPad」の商標権は
唯冠科技深圳が持っていることから、
アップル社は「iPad」の商標を
使用してはならないというものです。

これに対し、アップル社は、
唯冠科技深圳の台湾のグループ会社から、
全世界における「iPad」の商標権を購入したと主張しています。

これに対し、唯冠科技深圳は、
中国以外の「iPad」の商標権を売却したという主張をしています。

この点は、商標権の売買契約書を見れば明らかだと思うのですが、
はっきりとは書かれていないのかもしれません。

報道の中には、台湾のグループ会社は、
中国の商標権の販売の権限を持っていないという主張を
唯冠科技深圳がしているのに対し、
アップル社は、台湾のグループ会社と唯冠科技深圳とで
会社の代表者が同じなのだから、
商標権の販売権限を持っていた
という主張をしているというものもありました。

具体的な事情については、
報道される範囲でしかわかりませんが、
「iPad」という有名な商標の売買で、
こんなに揉めてしまうなんて、珍しいことだと思います。

それだけ、契約書は、
売買となる商標の対象や商標権を持っている権利者を
明確に確定することが大切だということです。

アップル社ほどの大会社の弁護士が、
その辺を間違うとは思えないのですが、報道によれば、
唯冠科技深圳の差し止め請求を認めた
中国の裁判所もあるようですから、
なかなか大変な裁判のようです。

実は、この唯冠科技深圳は経営は破綻状態にあり、
その債権者である国有銀行が
自分たちの債権回収の資金とするために、
アップル社からお金を取ろうとして、
このような裁判を起こさせているという報道もありました。

この裁判がどういう決着を見るのか、注目です。


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2012年3月6日(火)

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