弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第747回
美人すぎる市議の言い訳は?

新座市の女性市議が当選無効の決定に対し、
不服として審査申し立てたことが報道されています。

当選無効の理由は、被選挙権を有するには、
その区域内に3カ月以上の居住が必要だけれども、
市議は居住の実態がなかったと
新座市の選挙管理委員会に判断されたということです。

居住の実態がなかった具体的な根拠としては、
水道、ガス、電気の利用が少なかったことと、
義理の母(夫の母親)が
「新座市に住み始めたのは当選後」
という証言があったことだそうです。

これに対し、市議は、
「水はミネラルウォーターを飲むし、風呂は外で済ますし、
自炊もしない、洗顔もしない、
トイレはコンビニなどを利用することもあった」
などと言っているようです。

また、義理の母の証言については、
夫と離婚調停中なので
市議に不利な証言をしているということのようです。

確かに、義理の母は、離婚調停の相手方である夫の母親なので、
市議に不利な証言をする可能性はあるでしょう。
 
しかし、水道、ガス、電気については、
客観的な数値なので、
なかなか覆すのは難しいのではないでしょうか。

中でも、ガスの契約をしたのが2月であったこと、
水道の使用量が10月から1月まではゼロだったのに対し、
2月から3月までで7立方メートルであったこと、
電気の使用量が9月から2月までは20キロワットだったのに対し、
3月だけで240キロワットということは、
市議の言い分に従うと、
1月までは、水道ガス電気を使用しない生活をしていたが、
2月以降は水道ガス電気を使用する生活をするようになった
ということになります。

この違いを市議は合理的に説明をしなければなりません。
2月は選挙の月ですから、通常考えれば、
2月に当選してから新座市で生活をするようになり、
ガスも、電気も、
水道も使用するようになったということでしょう。

何と、このことは、離婚調停中の夫の母親の証言と一致します。
ということは、
夫の母親の証言も信用性があるということになります。

もし、市議が風呂も、トイレも、洗顔も、
自炊もしないというライフスタイルなのであれば、
当選した2月以降も同様に、水道、ガス、電気は
使用料が少ないはずです。
しかし、2月以降は、水道、ガス、電気を使用しています。
ということは、2月より前は、
水道、ガス、電気を使用しない生活をしていた
という証言に疑問が残ります。

裁判では、このように争いのある事実について判断して行きます。
女性市議については全く詳しい事情は知りませんが、
みなさんに、裁判での事実認定や証言の信用性について
説明するために、このニュースを取り上げてみました。


←前回記事へ

2012年5月22日(火)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ