弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第759回
口頭の合意で契約成立か?

読売新聞によればNHKが講談社を提訴したそうです。
その内容は、小説のドラマ化について
口頭で許諾したにもかかわらず、
撮影開始直前になってドラマ化の許諾を撤回したので、
撮影準備にかかった費用約6000万円の
損害賠償請求を求めるというもののようです。

NHK側は、
「口頭での合意が正式契約であることは業界での慣習」と主張し、
講談社は
「原作改変が著者の意向に反していたため、合意に至らなかった」
と主張しているようです。

日本では、口約束で、大きな金額が動いている業界は少なくありません。
テレビなどマスコミや芸能界もそうなのでしょう。
そして、法律上、口約束も契約として有効とされています。
とすれば、NHKの主張が通るように見えます。

しかし、裁判となると、
いつ、誰と誰がどういう内容の口約束で、
契約が成立したのかを立証しなければなりません。

しかし、口約束だと、一方は「言った」、
他方は「言わない」という
「言った」「言わない」の問題となってしまいます。

したがって、口約束で契約が成立したという場合、
裁判での立証はなかなか難しいです。

具体的には、双方が口約束でどこまでの内容を決めたのか、
その口約束後にどのような行動を取ったのか、
メールやファックスなどに
口約束の内容を前提としたことが書かれているかなど、
前後のことをこと細かく証明していく必要があります。

そのような細かいことを証明していったとしても、
裁判所にまだ最終的な合意ではなくて、
合意のための話し合いだったと
認定されてしまう可能性があります。

契約書を交わしていれば
契約の成立は簡単に証明できてしまいます。
だから、合意や契約が成立したら、
合意書あるいは契約書を交わしておくのが良いのです。

他人事なので、このNHKと講談社の裁判が判決まで行って、
双方がどういう主張をして
裁判所がどういう結論を取るか公表されると
面白いなと思っています。


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2012年7月3日(火)

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