第89回
日本企業の中国要員不足

最近では日本の雑誌などでも、
中国での就職を特集する所が出て来ました。
以前は口コミでしか探せなかった就職先も、
ここ1-2年は日系の人材派遣会社に登録すれば、
様々な企業を斡旋してくれる様になりました。
便利になったものです。
それだけ中国で就職する事が
一般的な事になりつつあるのでしょう。

しかし、日系企業が現地採用の日本人に対して期待しているのは、
飽くまでも「中国人スタッフには出来ない仕事を
駐在員より安い給料でこなす事」であり、
「駐在員の代わり」ではありません。
日系企業は基本的に
本社での勤務経験がある日本人駐在員は信用しますが、
現地採用の日本人が
駐在員の代わりを勤められるとは考えていません。

一方で、日本企業の中国駐在員は明らかに人材不足です。
引越の仕事をやっていると良く分かるのですが、
人材が豊富と言われる大手企業でも、
北京から上海、北京から広州、又は上海から北京と言う様な
中国国内の異動が頻繁に行われています。
又、以前北京に駐在していて、一旦は日本に帰ったのですが、
数年後、再度北京に戻ってくる、というケースも多々見られます。
明らかに数少ない中国要員を何とかやりくりしている、
という感じです。

人材が豊富と言われる大手企業でさえ、こんな状況ですので、
中小企業に至っては、
中国要員を確保する事さえままならない状態です。
私が中国駐在員事務所代行事業を始めた背景には、
中国ビジネスは始めたいが、
中国要員を確保出来ずに困っている中小企業に、
信頼に足る良質なサービスを提供すれば、
必ず需要はある、という読みもありました。

私自身、日本企業の中国要員不足を
身近に感じる体験をしました。
私が丸紅の北京支店で働いている時、
中国駐在経験のある50代の先輩数人が、
早期退職制度を利用して丸紅を退社しました。
失業率が5%を超えているこのご時世で、
通常、50歳を超えてから再就職する事は至難の業です。
しかし、彼らは中国駐在経験があって、中国語が話せる、
という事で、退職と同時に
日系企業の工場長や事務所長のポストを獲得しました。

こうした華麗な転職劇を目の当たりにして、
私は「50代の彼らが即再就職出来るなら、
30代後半の私が再就職出来ない訳が無い。
万一起業に失敗して、資金が底を突いたとしても、
必ずすぐに再就職出来る。
妻と子供たちを路頭に迷わせる事は無い」と確信し、
起業に向かって最後の一歩を踏み出したのでした。


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