第103回
すばらしき中国医学

こうして、食べ物の事を考えていくと、
中国に限らず、各国各地の料理は、長い歴史を経て、
現地のたくさんの人々が知恵を絞って、
その土地土地で採れる食材を
どうやって料理したら一番おいしく食べられるか、
を考え抜いた、究極の形である事が良く分かります。
いくら流通が発達した現代と言えども、各地の料理は、
その土地の食材を使った現地の料理が一番おいしいのでしょう。

そう考えると、
本場の四川料理を苦労して日本で再現する事を考えるより、
いっその事、本場の四川料理を食べたい日本人を
四川省に連れて行ってしまった方が、
ずっと簡単においしい料理を食べてもらえる様な気がします。
そういった意味で、
今はSARSの影響で壊滅的な状態になっていますが、
旅行業というのは、人々の夢を叶える非常にやりがいのある、
成長の期待出来る業界だと思います。

これは食べ物だけに限りません。
例えば、中国医学もそうです。
私は時々中国医学の大夫(だいふ、お医者さん)に
体調を診てもらいます。
「中医学事始め」の城戸さんも書いておられますが、
中国医学は実に奥が深く、すばらしいものです。
対症療法の西洋医学に対し、
体質を改善する事により病気そのものの発生を防ごう、
というのが中国医学の考え方です。

中国医学の病院に行くと、
まず、大夫から「最近良く眠れるか」「食欲はどうか」など
体調や生活の状態に就いて事細かく訊かれます。

その次は脈を診ます。
脈は人差し指、中指、薬指の3本の指を使って、
手首の3ヶ所の脈を同時に診ます。
これを両手首やりますので、
合計6ヶ所の脈を診る事になります。
大夫は脈を押さえると
「寸脈が玄だ」などと暗号の様な事を言いながら
瞬時にそれぞれの脈の状態を判断し、
これで各内蔵の状態を把握します。

その後は舌を診たり、顔色を診たり、腕をさわったりして、
情報を収集し、
最終的に「胃腸が悪い」とか、
「心臓が弱っている」とかの診断を下すと、
漢方薬の処方箋作りに入ります。

中国医学の大夫は何も見ずに、
漢方薬の材料の名前と調合するグラム数を
すらすらと紙に書いていきます。
調合する材料の数は、1つの薬で10-20種類に及びます。
すでに病気になっており、即効性が必要な場合は液体で、
ゆっくりと体質を改善する場合は固体で処方します。
この処方箋を「同仁堂」などの薬局に持っていくと、
数日でオーダーメイドの漢方薬が出来上がって来ます。


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