第127回
仕事がある事の有り難さ

「丸紅の看板を外した自分の本当の実力を知りたい」
なんてかっこ良い事を言って丸紅に辞表を出しましたが、
いざ、独立起業してみると、丸紅の看板が非常に大きかった事を、
今更の様に思い知らされました。
「丸紅ですが」と電話を掛ければ、
取り敢えず話は聞いてもらえますが、
「北京華信公司ですが」では、
ほとんど話を聞いてもらえません。

「中国事務所代行」という仕事の性質から言って、
実質的に考えれば、私が中国人スタッフと、
丸紅北京支店の中で働いていようが、
北京華信公司で働いていようが、
出来る仕事はほぼ同じですし、
同じだけの付加価値を生み出す事が出来るはずです。
しかし、お客さんにしてみれば、
丸紅の様な名の知れた大企業ならば信用出来るが、
北京華信公司などという聞いた事もない零細企業は信用出来ない、
となってしまうのでしょう。

そんな訳で開業後半年は、
日本の中小企業にアプローチしても相手にされず、
相手にされても圧倒的にこちらに不利な条件を飲まされ、
いつまで経っても安定収入の見通しは立たず、
手持ちの資金もものすごい勢いで減っていき、
このままでは資金があと1年ももたない、と考えると、
眠れず、食べられず、結局半年で7kgも痩せてしまいました。
今でこそ、「ダイエットには独立起業が効果的!」などと
軽口を叩ける様になりましたが、
当時は本当に洒落にならなかったです。

そんな中で身に沁みたのは、「仕事がある事の有り難さ」です。
丸紅にいる時は、
やらなければならない仕事が常に10個以上後ろに控えており、
「常に仕事に追いまくられる生活は嫌だ!」
と思っていたのですが、
いざ、独立起業してみると、仕事が無い=収入が無い、ですので、
仕事があるだけで有り難い、と思う様になりました。
よくテレビで若手の売れない芸人が、
「何でもやりますから、仕事ください」と言っているのを見ますが、
今ではその気持ちが本当によく分かります。

最近は仕事が立て込んで、
徹夜をしたり、土日も休めなかったりする事もありますが、
仕事が無い苦しみに比べたら、苦でも何でもありません。
むしろ「こんなに仕事があって何て幸せなんだろう」
と思いながら、仕事をしています。


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