第147回
「気に入ったら、買ってください」

一通り各漢方薬茶の説明を終えた男性は、
「気に入ったお茶があれば、買ってください」と言います。
お値段はどの漢方薬茶も一律1缶200元(3,000円)。
しかし、その「1缶」は、既に缶に詰められたものでは無く、
目の前で茶葉を缶に詰めてくれます。
それも蓋が閉まらないぐらいに、
ぎゅうぎゅう詰めに詰めてくれます。
「もし、詰め方にご不満があれば、
ご自分でお好きな様に詰めて頂いて結構です」とまで言います。

多分、漢方薬茶の原価はどれも安く、
ぎゅうぎゅう詰めに詰めた所で、
利益には余り影響しないのだと思いますが、
それでも、蓋が閉まらないぐらいに
ぎゅうぎゅう詰めに詰めてもらうと、非常にお得感があります。

更に、2缶買ったお客さんには、
「もう1缶買えば、無料で1缶お付けします」と言います。
これも多分、1缶おまけで付けた所で、
原価が安いので利益には余り影響はしないと思うのですが、
そう言われればもう1缶買って、
おまけの1缶をもらいたいのが人情です。

そんなこんなで、結局、自分用や家族用や友人用で、
だいたいの人は600元(9,000円)で3缶買って、
1缶おまけをもらいます。
1グループで5人買えば、3,000元(45,000円)の売上です。
利益率はどの程度か分かりませんが、
少なく見積もって50%としても
1グループで1,500元(22,500円)の利益です。
このぐらいの利益が見込めるならば、
1グループへの説明に30分を費やしたとしても
全く惜しくはありません。

この漢方薬茶屋の巧みな所は、
外でガイド役をしている女性も、中でお茶を飲ませてくれる男性も、
全くお客さんに商売っ気を見せず、強要をしない所です。
しかし、それにより逆に、お客さんは自ら買う気を起こし、
財布の紐を緩める事になります。

よく中国では路上の物売りが
「買ってくれ、買ってくれ」としつこくついてきて、
結局、根負けして、物を買ってしまう、という事がありますが、
お客さんにとっては決して気分の良いものではありません。

しかし、この豫園の漢方薬茶屋では、お客さんは一切強要をされず、
商品の説明を受けて、「気に入ったら買ってください」と言われて、
気に入れば自ら能動的に物を買います。
自分の意志で物を買った後は、お客さんも気分が良いものです。

「買ってくれ、買ってくれ」と言えば言うほど、
お客さんは引いていきますが、
商品の説明をして、「気に入ったら買ってください」と言えば、
お客さんは能動的に買ってくれます。
こうした営業の原点を改めて見せてもらい、
大変勉強になりました。
ありがとう、豫園の漢方薬茶屋。


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