第161回
「人脈起業」

中国ビジネスをするには
「人脈が無ければ成功しない」と良く言います。
確かに、お役所にお友達がいたりすると、
まともにやったら膨大な時間がかかる所が、
スッと通ったりする事はあります。
しかし、私は
「中国ビジネスは人脈が無ければ成功しない」とは思いませんし、
逆に「人脈に頼ったビジネスは非常にリスクが高い」
と思っています。

「人脈」と一言で言っても、その質はまちまちです。
中国にいると
「俺は公安部の高級幹部と老朋友だ」とか
「私は北京市長の甥っ子の同級生だ」
なんていう人に良く会いますが、
実際には1回名刺を交換しただけ、とか、
たまたま同じ学校を卒業しただけで、向こうは全然知らない、とか、
そんなのばっかりです。

本当に偉い人と知り合いである場合もありますが、
「そんなすごい人脈持ってるのに、
じゃあ、何であんたはいつまでも
一介のしがないサラリーマンなんだ」
というケースがほとんどです。
人脈があっても、使えない人脈では仕方がありません。

私が知っている本当の人脈を持っている人達は、
人脈のメンテナンスに大変な努力をしています。
毎日の様に様々な偉い人を、
高級料理店や高級サウナで接待しています。
もちろん、費用は全て自腹です。
昼間は仕事そっちのけで、夜のアポ取りに余念がありません。
とても我々日本人に真似の出来る事ではありません。

それだけの時間と費用をかけて保っている人脈も、
ライバルに敗れて失脚し、
全く関係の無い部署に飛ばされてしまうかもしれませんし、
いざという時に頼ったら本当は余り権力がなかった、
なんて言う事も起こり得ます。
人脈に頼ったビジネスは非常にリスクが高い、
と私が思うのは、こうした理由からです。

しかし、中国では人脈だけが頼りの起業、
言わば「人脈起業」をする人が後を絶ちません。
「大手国有企業の営業部長と老朋友なので、
商品を安く仕入れさせてもらえる」とか、
「国家機関の購買担当者と友達なので、
うちの商品を優先的に買ってもらえる」
なんて言う話を良く聞きますが、
いざ起業してみると、そのお友達よりもっと偉い人が、
元々の会社との取引を継続する様に命令、
頼りにしていたお友達からは
「すまん、俺も上司には逆らえないんだよ」などと突き放され、
「人脈起業」で興した会社はあえなく倒産、
という様な事例がたくさんある様です。

良い人脈は会社にとって強みになる事は確かです。
しかし、人脈だけが頼りのビジネスは、
リスクが高すぎます。
やはり人脈は、
提供する商品なりサービスなりの本当の実力があってこそ、
生きてくるものなのではないでしょうか。


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