第183回
「ニセモノ」の王者、海賊版CD/DVD

中国で最も流通量の多い「ニセモノ」は、
CDやDVDではないでしょうか。
北京では海賊版のCDやDVDは、
だいたい10元(150円)で売られています。
製造コストがほとんどかかりませんので、
この値段でも十分利益が出るのでしょうが、
捕まったら最悪死刑になるリスクを考えれば、
決して割りの良い商売とは言えないのではないでしょうか。

犯罪にもかかわらず、販売の仕方はわりとオープンです。
街を歩いている人に片っ端から「DVD?」と話しかける売り子には、
まだ罪の意識が感じられますが、
中にはスーパーや地下道など人通りが多い所に
堂々と海賊版のDVDを並べて売っている人もいます。
そうした売り子を捕まえて、仕入れルートを辿る事は、
中国の警察力をもってすれば容易な事であると思うのですが、
現状、ほとんど野放し状態となっています。

海賊版DVDの世界も競争が激化しているらしく、
公開されたばかりの新作映画がどんどん発売されます。
中にはどうしてそういう事が可能なのか分かりませんが、
ハリウッド映画が全米公開に先立って、
中国の海賊版DVD市場に出回る事もあるそうです。
それも、中国語の字幕付きで。

海賊版DVDの画質はピンキリで、
ひどいのになると、明らかに映画館に
家庭用ビデオカメラを持ち込んで撮ってきました、
というものもあります。
そうした作品には、前の列の人の頭の動きや、
周りの人の話し声、スナックを食べる音が入っている事もあり、
また違った意味で映画館にいる様な臨場感が味わえます。

こうした中国での海賊版の横行で、
最も被害を被っているのは香港や台湾の歌手ではないでしょうか。
特に、香港の歌手は、
広東語で歌っていては600万人の香港市場しかカバー出来ない、
という事で、最近では13億人の大陸市場を狙うべく、
慣れない北京語で歌う歌手が増えています。
一生懸命北京語で歌った歌がヒットしても、
すぐに海賊版が流通してしまっては、
がんばったかいがありません。

こうした事もあり、先日、上海で
香港や台湾の歌手が消費者啓蒙の為に、
「アンチ海賊版コンサート」を開きましたが、
このコンサートのニセモノチケットが流通する、
という洒落にならない事件が起き、
主催者の思惑とは逆に、
中国のニセモノ横行の根の深さを
印象付ける結果となってしまいました。

海賊版やニセモノは、売る人も悪いのですが、
買う人がいるから横行している、という側面もあります。
中国政府は売る人の取り締まりを強化するのと同時に、
買う人の意識改革も促していく必要があるのではないでしょうか。


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