第197回
タイムイズ「ノット」マネー

中国の一般庶民は、「時間」はタダだと思っています。
欧米では「タイムイズマネー」、
日本でも「時は金なり」と言いますが、
中国ではむしろ有り余る時間をどう潰すかが問題となります。

国有企業に勤めていれば、
定時出勤、定時退社、土日は休みですので、
時間はたくさんあります。
しかし、給料が安く設定されていますので、
衣食住に困る事はないのですが、
娯楽に回せるお金は少ないです。
となると、いかにお金を掛けないで有り余る時間を楽しく過ごすか、
が最大の課題となります。

一番お金が掛からない娯楽は「おしゃべり」です。
中国の人たちはみんな、本当におしゃべり好きです。
話題は近所のスーパーの安売り情報から、
アメリカ軍のイラク占領統治の是非まで、多岐にわたります。
誰かが新聞など持っていようものなら、
話題が尽きませんので、おしゃべりはいつまでも続きます。

夜、レストランに家族や友達同士で食事に来ている人を見ると、
夜が更けるまでいつまでもいつまでも
おしゃべりをしながら食事をしています。
ゆっくりと食べたり飲んだりしながらしゃべりまくる。
まるでイタリア人の様です。
日本では今、せわしない日常を反省して、
こうした「スローフード」を見直す動きがありますが、
イタリアまで行かなくても、
こんな近くにそのお手本があります。

マクドナルドも中国では
「ファストフード」ではなく、「スローフード」です。
バリューセット1つで、何時間でもずーっと粘ります。
中国のマクドナルドは、世界のマクドナルドの中でも、
かなり顧客回転率が悪い方なのではないでしょうか。

おしゃべりの他にも、バドミントン、凧揚げ、
ウィンドーショッピング、夏の夕涼み、
公園での太極拳や集団舞踊、
けんかや交通事故の野次馬など、
それぞれ、お金が掛からない娯楽を楽しんでいます。

物を買う時にも、
時間を節約するより安く買う事の方が大切ですので、
値段交渉では粘りに粘ります。
こうしたお客にいつまでもかかずらわっていると、
もっとすんなり買ってくれる上客を逃す可能性がありますので、
店側が折れてしまう事が多い様です。
やはり交渉事は時間をたくさん持っている人の方が強いです。


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