第199回
「払わない者勝ち」

先日、とうとうやられてしまいました。代金不払い。
中国語から日本語への比較的量が多い翻訳を中国企業から受注して、
約5万元(75万円)請求したのですが、
翻訳がまずかっただの何だのいろいろと難癖を付けられて、
結局、約1万元(15万円)しか払ってもらえませんでした。

納品までは非常に友好的な態度だったにも関わらず、
納品と同時に態度が豹変、
最初は一切払わない、と言っていたのを、
何とか交渉して、1万元だけ払ってもらいました。

納品前ならば納品拒否などの強硬手段に出られるのですが、
納品してしまった後では、
もうお願いして少しでも払ってもらうしかありません。

中国の高額所得者をターゲットとした高級引越業務も、
こうした理由から手を引きました。
彼らは引越の最中は何も言わないのですが、
引越が終わって、さぁ支払い、という段になると、
いろいろと難癖を付けて、
二言目には「じゃあ、全額払わない!」と言うのです。

私は丸紅北京支店時代に、
こうしてお金を払わない中国企業をたくさん見て来ましたので、
起業をするに当たっては、
まずは、ちゃんとお金を払ってくれる
日本企業からお金をもらう様な事業にしたい、と思い、
駐在員事務所代行事業で起業をする事にしました。
資金力が無い個人企業が一度でも不払いをかまされれば、
会社はすぐに潰れてしまいます。

彼らがこんなに強気に出られるのは、
絶対訴えられない、という確信があるからです。
中国の弁護士の中には、
30-50%の成功報酬で債権回収の代行をしてくれる人もいます。
しかし、回収金額が4万元程度では、
成功報酬が50%だとしても
2万元(30万円)にしかなりませんので、
引き受けてくれる弁護士はまずいません。

債権回収にかかる時間と労力、
回収出来なかった時には
1元の報酬も手に出来ないというリスクを考えれば、
この程度の報酬ではやっていられません。

タイムチャージで弁護士を雇って訴訟を起こしても良いのですが、
北京の弁護士費用は通常1時間US$200(2.2万円)ですので、
あっと言う間に弁護士費用が回収金額を上回ってしまいます。

中国では数千元、数万元の小口債務は、
事実上、「払わない者勝ち」の状態となっています。


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