第231回
「中国なのに何でこんなに高いんだ!」

中国は何でも安いと思っている日本人がいます。
私も仕事上、中国の物やサービスの見積もりを
日本企業に出す事がありますが、
「中国なのに何でこんなに高いんだ!」と言われる事があります。

ここ数年の中国ブームで、
日本でも多くの中国関係の情報が流され、
その中で「中国の人件費は日本の1/20」というのは、
今や日本人なら誰でも知っている「常識」となりつつあります。
人件費が安い中国に生産拠点を移して、
生産コストを下げる事は、
日本企業がデフレを乗り切る為の最後の手段である、
という訳です。

確かに、中国で工場を作って、工員を募れば、
安価な労働力がいくらでも集まります。
寮と1日3食を保証してあげれば、
1ヶ月600-700元(9,000-10,500円)の給料で十分です。
人件費は本当に日本の1/20です。
しかし、1/20の人件費には
「田舎での単純作業の場合」という但し書きが付きます。

これが「都会の知的労働者」となると、給料は跳ね上がります。
当社の場合で言うと、
日本語の話せない人でも手取りで月3,000元(45,000円)、
日本語が話せる人では月5,000元(75,000円)ぐらい払わないと、
ちゃんとした人材が採れません。

更に、弁護士、デザイナー、カメラマンといった、
専門職の人になると、
月給は10,000元(150,000円)を上回ります。
生み出す付加価値が高ければ高いほど、
収入は幾何級数的に増え、国際標準に近づいていきます。

冷静に考えてみれば、
今日、900円のランチを食べた日本人のデザイナーの作品が、
6元(90円)のランチを食べた中国人のデザイナーの作品より
10倍すばらしいか、10倍の付加価値があるか、と言えば、
そうとは限りません。
給料はその人が労働によって生み出した付加価値によって
定められるものであり、
その人の生活コストによって規定されるべきものではありません。

しかし、一部の日本人は
「中国人のデザイナーは生活コストが
日本人デザイナーの1/10なのだから、
作品の値段も1/10でしかるべし」と考えます。
この考え方は改めて頂かなければならんと思うのです。


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