第242回
生まれた時から日陰者

中国の農村では、
明らかに男女の出生比率がおかしい地域があります。
自然に産めば、男の子と女の子が生まれる比率は
ほぼ1:1になるはずなのですが、
そうした地域では、
男の子の出生比率が異常に高くなっています。

聞く所によれば、
こうした地域では、子供が生まれて、
その子が女の子だと分かると殺してしまう様です。

我が子を殺してしまうのは忍びない、という夫婦は、
その女の子を役場に登記せず、
男の子が生まれるまで子供を産み続ける様です。
という事で、こうした地域では、
登記上は男の子の一人っ子が妙に多い、という事になります。

登記されなかった女の子は、九死に一生を得たものの、
世の中には存在していない事になっていますので、
学校も行けず、ちゃんとした職にも就けません。
農業の手伝いをするか、
アンダーグラウンドの仕事をして一生を終えます。
生まれた時から、一生日陰者として
生きて行く事が確定している、というのは、
何ともやるせないものです。

こんな状況は、中国政府も把握しており、
殺されたり、登記されなかったりする女の子を減らすべく、
様々な手を打っています。
以前、私が山西省の田舎の炭鉱に行く途中に通った村の壁には、
「女の子も立派な労働力になるので、大切に育てよう!」
というスローガンが書いてありました。
こうした農民への教育も、その対策の1つです。

「農家女(のんじゃーにゅぃー)」という
農家の女性の経済的自立を促すプログラムもあります。
これは、「中国婦女報社」という新聞社がやっているのですが、
各機関や企業からの寄付で
北京市昌平区に全寮制の職業訓練学校を設立し、
全国から貧しい農家の女性を募り、
コンピューター操作、裁縫、理髪などの訓練をして、
手に職を付けて故郷に帰す、という活動です。

また、中国政府は、
貧しい農村に限り、1人っ子政策の適用を緩める、
という対策も打ち出しています。
1人目の子供が女の子だった場合、
もう1人産む事を許す、というものです。
2人目も女の子だった場合は、それで打ち止めですが、
それでも、この対策により、
殺されたり、登記されなかったりする女の子は、
かなり減っているのではないでしょうか。


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