第243回
見渡す限りの若い女の子

中国の農村はこんな状態ですので、
外資系の企業が工場を建てて、
女性労働力を吸収してくれるのは大歓迎です。
そんな訳で、農村の鎮や村の人民政府は、
土地を無償で提供したり、
企業所得税を減免税したりして、
積極的に外資系企業の誘致をします。
彼らにとっては、土地などただみたいなものですし、
最初は企業所得税が取れなくても、
女性労働力の受け皿になってくれるだけで
十分ありがたいのです。

一方の外資系企業も、手先が器用な女性労働力が、
自国の1/20ぐらいの給料で、いくらでも調達出来る、
という事で、
お互いの利害がうまくマッチした状態になっています。

先日、ある日系電器メーカーの
上海近郊の工場にお邪魔しました。
工場の中は見渡す限りずらーっと若い女の子が並んでおり、
みんな黙々と各々の仕事をこなしています。
我々男どもが工場の中に入ると、
300本ぐらいの視線が突き刺さり、
彼女たちはお互いに何かこそこそ話しています。
何か、女子校に配属されてしまった新任教師みたいな気分です。

彼女たちはみんな、近郊の農村から来ており、
全員、工場に隣接した寮に住んでいます。
寮は1室8人で、
2段ベッドの自分の場所だけが、プライベートな空間ですが、
シャワー、水洗トイレ、暖房完備で、
1日3食の賄い付きですので、
農村の実家に比べれば、天国の様な生活です。

この様に、中国の工場労働者は、
大量の予備軍を農村に抱えていますので、
いくら経済が発展しても給料が高騰する事はあり得ません。
一方で、都市の頭脳労働者の給料は、
今後、どんどん上がっていく事が予想されます。

こうした都市と農村の経済格差により、
農民や労働者の不満が鬱積して、いつか爆発するのではないか、
という事を、中国共産党は極度に恐れています。
農民と労働者の代表であるはずの共産党が統治している国で、
農民一揆や労働者のストライキが起こったら
しゃれになりません。
国際社会の笑い者になってしまいます。

という事で、今後、
中国政府は沿海部の富を内陸に送り込む政策を更に強化し、
「三農問題」の解決に全力で取り組んで行くものと思われます。


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