第263回
「性悪説」税務システム

中国の税務システムは
「企業とは放っておけば脱税をするものである」という
「性悪説」に基づいて作られています。
二重、三重の脱税対策でがんじがらめにされた
中国の企業経営者が脱税をするのは、
ほとんど不可能であると思われます。
企業を放し飼いにしておいて、
時々、抜き打ちの査察で締める、という
「性善説」に基づいた日本の税務システムとは
対極にあるのが、中国の税務システムです。

「性悪説」税務システムの要は3つ。
「文房具屋では売っていない発票」、
「売上に対して課税される営業税」、
「損金計上率が小さい飲食、広告費」です。

まずは、「文房具屋では売っていない発票」です。
発票(ふぁーぴゃお)とは領収書の事です。
日本では領収書は文房具屋で売っていますが、
中国では税務局で売っています。
当社の場合、税務局から
「発票作成ソフト」、「発票用プリンター」、「発票本体」の
3点セットを約4,000元(60,000円)で
強制的に買わされました。
発票を発行する必要がある時には、
会社名や金額などを、
「発票作成ソフト」と「発票用プリンター」を使って、
「発票本体」に印字します。

「発票作成ソフト」に入力した内容は、
全てオンラインで税務局に送られ、
当社の売上データとして蓄積されます。
これは発票を発行した全ての売上が、税務局に把握され、
課税の元データとなる、という事を意味します。
日本の様に、
文房具屋で買ってきた領収書をお客さんに渡して、
帳簿には売上として計上しない、
なんていう事は一切出来ません。

一般的に、会社対会社の取引の場合、
お金を払う側は、
発票をもらわないと損金計上が出来ませんので、
ほぼ100%、発票を要求します。
税務局にとっての問題は、飲食店など、
お客が発票を要求しない事が多い業種です。

発票の発行を伴わない売上については、
税務局も把握出来ませんので、
経営者は売上を過少申告する事が可能となります。
こうした状況に業を煮やした北京税務局は、
2002年からくじ付き発票の発行を開始しました。
現金が当たる、という事であれば、
自腹で食事をした人でも、
発票を要求する様になるであろう、
というのがその狙いです。

発行当初は、最高5,000元(75,000円)が当たる、
という事で、みんなゲーム感覚で発票をもらい、
発票の銀の部分をスクラッチしていました。
税収もかなり上がった、との報道もされていました。
しかし、最近では、
ほとんど当たらないという事が分かった事と、
当たったとしても20元(300円)の当たり発票を、
往復30元(450円)のタクシー代をかけて、
発票交換所まで持っていかなければならない、
という事が分かった為、
以前よりも飲食店等で
発票を要求する人は減った様に思います。


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