第264回
日本の税務当局も見習うべき

「性悪説」税務システムの第二の要は、
「売上に対して課税される営業税」です。

日本の税務システムでは、税金は利益に対して課税されます。
ですから、企業経営者は
少しでも多くの経費を損金として計上して、
課税対象利益を減らそうとします。

中国の税務システムでも、
利益に対しての課税である「企業所得税」はあるのですが、
それとは別に、サービス業の会社については、
売上に対しての課税である「営業税」というのがあります。

当社の場合、サービス・コンサルティングの会社ですので、
発票を発行した売上に対し、
まず5.5%の「営業税」が課税され、
売上から売上原価、経費を除いた利益に対し、
年間の利益の額が10万元(150万円)以上だった場合、
更に、33%の「企業所得税」が課税されます。
完全に税金の二重取りです。

このシステムならば、税務局は、
経費を損金計上しまくって、
赤字を装っている企業からも、
しっかり税金を取る事が出来ます。
考え方としては、東京都が都銀に対して課そうとした
「外形標準課税」に似ています。

では、「営業税」さえ払えば、
経費を損金計上しまくって、会社を赤字にして、
「企業所得税」を払わなくていいのか、というと、
そういう事でもない様です。

これが「性悪説」税務システムの第三の要、
「損金計上率が小さい飲食、広告費」です。
飲食費は業務用か私用か、
発票を見ても見分けがつきませんし、
広告は値段があって無いようなものですので、
利益の操作に使われやすい経費の費目です。

当社の場合、飲食費は総額の0.5%、広告費は8%しか、
損金として計上出来ません。
1,000元(15,000円)飲み食いしても、
5元(75円)しか損金として計上されないのであれば、
私用でレストランに行った時の発票を貯めておいて、
会社の経費として計上しよう、などという気は起きません。

こうした「性悪説」税務システムは、
税金徴収の効率化、という観点から見て、
日本の税務当局も見習うべき点はたくさんあると思います。
ただ、中国の「性悪説」税務システムを日本で採用した場合、
脱税で何とか生き長らえていた会社がバタバタと潰れ、
倒産件数が跳ね上がってしまうかもしれませんが...。


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