第277回
その土地に足りないもの

さて、コペンハーゲンのオープンカフェで、
とんでもなく高いツナサンドと生ビールの食事をした後、
街の様子を眺めながらふと思いました。
「自分がこの街に一人で放り出されたら、
何の商売をして食っていけるだろう」。

コペンハーゲンの街は、
昔の建物がたくさん残されており、整然としています。
レストランやホテルでも、
サービスはきちんとしており、みんな流暢な英語を話します。
中国の様に、
建設ラッシュで労務者が上半身裸で街をうろうろしていたり、
レストランに入ると
とんでもなく無愛想なウエイトレスがいたり、
ホテルなのに英語を話せる人が1人もいなかったり、
なんて事がありません。

商売のネタ、というのは、
生活の中で「不便だな」とか、
「こういうものがあったらいいのにな」と感じる所から
出てくるものだと思います。
今の中国は、以前に比べかなり便利になったとは言え、
まだまだ「不便だな」だらけですので、
それこそ100や200のビジネスアイデアを思いつくのは
容易な事なのですが、
コペンハーゲンの街は、
何か完全な形で自律的に回っており、
一東洋人が割り込む余地はない様に思えます。

しかし、多分、長く住んでみれば、
コペンハーゲンの街がどういう仕組みで動いていて、
何が足りないのかが、だんだん分かってくるのでしょう。
先々週からHiQで連載を始められた
前川さんのコラムを拝見した所、
当時、コペンハーゲンのミニ現像所業界は黎明期であり、
まだ市内に数件しかない、という理由もあって、
コペンハーゲンでミニ現像所のビジネスを始められた、
とありました。
こんな事は、旅行でコペンハーゲンに行って、
上っ面だけ見ても分かる事ではありません。

やはり、その土地でビジネスを始めるには、
まずは、その土地に住んでみないと、
何がその土地に足りないのか、
何がビジネスになるのか、という事は分からないんですね。

中国でビジネスを興す事を志す皆さんは、
日本であれこれ考えているよりも、
まずは、中国に住んでみて、
いろいろな事情が分かった上で、
ここには何が足りないのか、
自分はその足りないものを補う事が出来るのか、
という事を考えてみたら如何かと思うのです。


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