第288回
人脈を現ナマに

中国でビジネスをしていると、
「俺は胡錦涛の甥のいとこと同級生だった」とか、
「私は胡錦涛の伯父さんの孫と老朋友だ」とかいう人と
たくさん出会います。
私は毎回「へ〜、それはすごいですねぇ〜」と、
てきとーに受け流しているのですが、
それらが全部本当だったら、
胡錦涛一族は数千万人単位の人数になりそうです。

たとえ、それが本当だったとしても、
「だから何なんだ」というのもあります。
「じゃあ、今度、うちの取引先の日本企業の社長が
中国に来た時に、そのつてを使って
胡錦涛との面談をアレンジしてください」と言うと、
「その同級生は海外に移住して、連絡先が分からない」とか、
「胡錦涛さんも忙しい方だから」とか、
それまでの自慢気な態度が
「シュー」という音を立ててしぼんでいくのが分かります。
そんな役に立たない人脈の自慢するな!

ま、胡錦涛までいかなくても、
「北京市政府に知り合いがいる」とか、
「公安局に友達がいる」とか、
比較的身近な人脈をもっている人はゴマンといます。
彼らはこうした人脈を、如何に効率的に現ナマに変えるか、
という事を日夜考えています。
人脈は持っているだけでは、腹の足しにはなりません。

こうした人たちの格好のターゲットが、
中国に進出しようとしている日本企業です。
日本ではいまだに
「人脈がないと、中国でビジネスをする事はできない」
という事が、固く信じられている様で、
そうした日本企業が、
人脈を現ナマにしたい中国の人たちに、
いいようにされてしまうケースが後を絶たない様です。

確かに、政府関係のプロジェクトや許認可関係では、
そうした人脈があった方が話がスムーズに進む、
という事があるかもしれません。

しかし、中国ビジネスを成功させる為に重要なのは
人脈の有無ではなく、
提供する商品やサービスに本当の実力があるかどうか、
という事だと思います。
実力があって、
価格以上の付加価値を与える事ができる商品やサービスであれば、
中国の人たちだって、向こうから買いに来てくれます。

逆に、人脈に頼らなければ売れない様な商品やサービスは、
真っ向勝負で売るだけの実力がない、という事ですから、
そのビジネスそのものを見直す必要があるのではないでしょうか。


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